2010 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代の外国人労働者とホームランド-デカセギ・ブラジル人の事例-
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20510238
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
三田 千代子 上智大学, 語学部, 教授 (40092340)
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Keywords | 外国人就労者 / グローバル化 / デカセギ・ブラジル人 / ホームランド / ホスト社会 / エスニック・コミュニティ / 人の移動 / 日系 |
Research Abstract |
1. 具体的調査研究:日本のブラジル人就労者(デカセギ)を事例として、外国人労働者とホームランドとの社会、経済、文化の各側面での相互作用を調査し、グローバル化時代の国境を超える人の移動がもたらす空間を越えて同時に進行する諸現象を把握することを目的に前年度行った研究調査から日本で就労を経験した日系ブラジル人がブラジルに帰国後、サンパウロ州内陸部と同時にサンパウロ市内で生活をしている者が多数に上ることが明らかになった。このことを踏まえて、サンパウロ市内及びその近郊の諸都市においてホスト社会日本との社会的諸関係について調査を行った。 2. 研究成果:1)具体的内容(1)静岡県浜松市でブラジル人が開催するイベントおよびブラジル人子弟の学校教育について調査を3日間行い、エスニック・コミュニティを構成する組織や成員について把握した。(2)ブラジリア大学で開催された第8回日本研究国際学会で研究協力者2名とともに分科会「デカセギ」で、浜松で行った現地調査結果と前年度に行ったアンケート調査に基づき日本の地方自治体とデカセギ・ブラジル人に関する報告を行った。(2)サンパウロ市及び近郊において8月から10月にかけて日本での就労経験者及びその家族(総数198人)を対象にホスト社会日本との関係に関する調査を行った。(4)サンパウロ市のサンパウロ人文科学研究所の定例研究会にて、この40年間におけるブラジルの日系社会の変化を、人の移動を中心に行った。(5)日本社会学会で在日ブラジル人のホスト社会とホームランドとの繋がりを越境者の心象的世界として提示した。(6)3月の国際会議では、「ニッケイ」および「トランスナショナル」という新しい概念が提出された。 3. 研究の意義および重要性:(1)外国人就労者がホームランドとホスト社会に同時存在することを提示することで国境を越えて生きる人の世界観が明らかになった。(2)外国人就労者とその子弟の持つ世界観の乖離を明示した。このことを今後、越境者の子弟の教育に取り込むことで意味ある効果が期待できる。(2)「ニッケイ」および「トランスナショナル」という新しい概念の提出は、グローバル化時代の国及び国境の概念の変化に結びつくことを示した同時に、時間と空間を超えて各国の日本人及びその子孫の比較研究が可能となることが明らかになった。
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Research Products
(7 results)