2010 Fiscal Year Annual Research Report
タミル語バクティ詩人・スィッタルたちの思想と運動―ラーマリンガルを中心に―
Project/Area Number |
20520042
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 博司 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (20230427)
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Keywords | ヒンドゥー教 / 南インド / タミル語文献学 / スィッタル / 聖者 / ラーマリンガル / スィッダ / 神秘主義 |
Research Abstract |
本年度は、前年度からの研究課題として、タミル・ヒンドゥー教における「スィッタル」の思想的・宗教的伝統を文献学的・文献史的に跡づけ掘り下げる作業を継続するとともに、スィッタルたちの伝統とも関連するタミル中世のシヴァ派文献『ティルットンダル・プラーナム』と48名の伝説的信徒たち(ナーヤナール、ナーヤンマール)の問題についても研究を拡張し、聖ラーマリンガル(ラーマリンガ・スワーミ)に連なるタミルナードゥのバクティ的伝統のより広い思想史的背景と推移とを考究した。 タミルナードゥのバクティ(帰依信仰)の伝統には二様の流れが観察される。神像崇拝や儀礼的要素を濃厚に伴うバクティと、本研究計画の核心をなすような聖像崇拝的・儀礼主義的要素を極力排除するバクティとである。研究課題である後者の考察には、二つの流れの起源を精査する作業が必須である。双方の共通の起源となっているナーヤナールたち(ナーヤンマール)とその信仰の性格を調べる必要があるのである。そのためには、それら聖者たちの生涯と類稀なるバクティとを綴ったタミル語の聖徒列伝『ティルットンダル・プラーナム』(別名『ペリヤ・プラーナム』)を読解し、それぞれの聖徒の思想と行状とを詳しく吟味することが重要である。ところが、この書物自体の成立が中世に下るため、バクティ初期に属するナーヤナールたちの実態をどれだけ踏まえているか疑問である。本年度は、スィッタルや聖ラーマリンガルの思想の検証とともに、それと並行し『ティルットンダル・プラーナム』についても批判的考察を試み、その編集の時代背景と時代的要請について研究発表を行った。 さらに、スィッタルの宗教伝統の近代的表現である聖ラーマリンガルの思想運動についての論孜が、島岩・坂田貞二・井田征之の編集による南アジア学会英文叢書の1巻としてインドのマノーハル社から出版され、広く学界に公開されたことも付記しておく。
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Research Products
(4 results)