2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520049
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
一郷 正道 Kyoto Koka Women's University, 学長 (60065844)
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Keywords | 仏教学 / 瑜伽行中観派 / 修習次第 / カマラシーラ |
Research Abstract |
インド後期中観派を代表する論師カマラシーラの著作である『修習次第』の思想史的意義は以下の点にある。後期中観派の思想体系は、カマラシーラの他の著作、あるいはカマラシーラの師シャーンタラクシタの著作等からその詳細が明らかになりつつある(一郷正道『中観荘厳論の研究』等参照)。彼らの成熟した思想体系が、他の仏教学派やインド諸学派との対論を通し育まれたものであることは疑いえないが、同時に、彼らが伝承する経典とその解釈、そして実践としての瞑想体験に裏付けられている点を忘れてはならない。カマラシーラの他の著作と比較して『修習次第』の持つ重要性は、まさにこの点、実践階梯としての瞑想を主題とし、それについての論述が豊富な経典引用によって正当化されている点にある。 さらに、中観派がわずかな修道論しか残していないことを踏まえるならば、『修習次第』が中観派の修道論の全体像を知り得る貴重な資料であることも重視されるべきである。したがって、『修習次第』に記される修道論、経典解釈等を明らかにすることは、カマラシーラのみならず、中観派内で継承されてきた修道論、経典解釈の一端を明らかにすることとなる。 以上の点を踏まえた上で、一昨年度からの研究活動において、研究代表者はすでに三篇すべて試訳を完成している。研究協力者と開催している輪読会では、研究代表者の試訳をたたき台に完成訳の作成を進めている。現段階の成果としては、『修習次第』において経典を引用する際の解釈、その順序等がジュニャーナガルバの『学集論』としばしば一致をみることが明らかになったことである。また、本研究活動の過程で、初篇は、後篇、中篇の著述を受けて作成されたものであることが一層明らかになり、従来の定説を変更することになりそうである。後篇、中篇の記述内容が、初篇に採用されていることは発見されるが、その逆の例は見られないからである。
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