2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520051
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Research Institution | Tsurumi Junior College |
Principal Investigator |
矢島 道彦 Tsurumi Junior College, 歯科衛生科, 教授 (80143337)
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Keywords | 印度哲学 / 仏教学 / ジャイナ教 / マンダラ / サマヴァサラナ |
Research Abstract |
計画書に沿ってインドへの調査旅行を二度実施した。一回目のグジャラート及びラージャスタン両州を中心とした調査旅行では、ウダイプル、ラーナクプル、アハル、ジャイプルなどの博物館やジャイナ教寺院を精力的に回り、多くの図像データを入手した。とくにラーナクプルでアーディナータ寺院の構造をめぐってインド人研究者と議論が行えたことと、小さいが重要なジャイナ資料を所蔵するアハル博物館を訪問できたことなどが成果として特筆できる。 また二回目の調査旅行は、当初オリッサ州の遺跡を調査する予定であったが、チャッティースガルフ州の新寺院建立に伴うジナ像の安置式を取材できることとなったので、急遽予定を変更して同州のビラーイ市に調査に赴いた。ディガンバラバ寺院における安置式は、ジャイナ教の初祖アーディナータを祀る儀礼で、前後一週間に亘る儀礼の主要な部分をほぼ完全に記録することに成功した。儀礼にはジャイナ教の僧尼約十名と数千の在俗信者が参加し、受胎、誕生、出家、悟り、涅槃というジナの一生(五つの慶事)が戯曲的に再現されたが、なかでも悟りの慶事に付随するジナの最初の説法(サマヴァサラナ)について、儀式当日の早朝、儀軌に基づいて地面に設計図が描かれるところから、その中にジナの説法を聴く聴聞衆(神々・僧尼・男女の在家者・動物など)が次々と入場してそれぞれ所定の位置につく場面、また円の中央にチャトゥルムカ(四面像)が置かれ、そのジナに代わって高僧が(人間の言葉で)説法を行う場面など、<聖なる集い(サマヴァサラナ)>がシンボリックに再現される様子を目の当たりにできた。仏教のマンダラとの比較を行う本研究を推進する上で非常に大きな収獲であった。 またその折にディガンバラ派の高僧とその弟子衆との交流の機会があり、さまざまな新知識を得た。また裸体で過ごす同派僧侶の生活実態について取材し、許可を得て写真・ビデオへの収録を行うこともできた。これらはジャイナ教を理解するためのきわめて貴重な資料となる。その他、デリー国立博物館を再訪して、前年度に入手した同館所蔵のジャイナ関係の図像データを公表することについて正式な許可が得られたこと、また上の儀礼の調査時に新たなマンダラ関係資料を多数入手し得たことなども成果として特筆したい。 仏教のマンダラとジャイナ教の関連図像との比較研究を行う上で、本研究者は当該年度の研究を通してきわめて大きな成果を得ることができた。今後、収集した貴重なデータをもとに、研究の成果を順次公表することとしている。
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