2008 Fiscal Year Annual Research Report
西欧各国および東アジアにおける受容から見たニーチェー耽美主義とナショナリズム
Project/Area Number |
20520077
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
三島 憲一 Tokyo Keizai University, 経済学部, 教授 (70009554)
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Keywords | 近代化 / 青年運動 / 耽美主義 / ナショナリズム |
Research Abstract |
ドイツ、フランス、イギリス、イタリアなどヨーロッパ各国におけるニーチェの受容の相違は、日本におけるニーチェ受容が上述の国々と異なるのと本質的に異ならない。そのことを明確にするためにそれぞれの国における近代化の特質と相互干渉を明らかにすることに今年度は留意した。ドイツでは、初期にニーチェは生活革新運動の一環として読まれたが、それは市民社会の行き詰まりを背景としてのことであった。フランスで、ニーチェが画一的な異性愛を越えた同性愛の解放を鼓舞したのも同じ背景である。それに対して、日本では、高山樗牛のように、美的解放を論じてはいても、江戸の遊郭趣味の延長で読まれた。だが美的革新運動がナショナリズムへと変質して行くのを鼓舞した点ではイタリア未来派のニーチェ読解がある意味では最先端であった。耽美主義とナショナリズムの結合はドイツの場合にはのちにもほとんどないのに対して、イタリアや日本ではニーチェの名と結びついた美的ナショナリズムが大きな力を揮った。 また、ニーチェにおける歴史的教養批判、啓蒙主義批判がそれぞれの国でどのように受容されたかを明らかにした。同時にダヌンツィオらにおける耽美主義とナショナリズムの結合のあり方が三島由紀夫におけるニーチェの読みなどに直接影響を与えているのか、あるいは、事柄の必然に根ざす構造的ものであるのかを確認するために、資料収集を行った。 さらには、ニーチェは当初、直接哲学とは無縁の青年運動で受容されていたのに、1920年代以降のドイツにおけるニーチェの哲学化、形而上学化が、ドイツの大学のどのような伝統を背景として、またヴァイマール時代のどのようなインパクトのもとに起きたのかを明らかにするための資料も収集した。
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Research Products
(3 results)