2011 Fiscal Year Annual Research Report
西欧各国および東アジアにおける受容から見たニーチェー耽美主義とナショナリズム
Project/Area Number |
20520077
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
三島 憲一 東京経済大学, 経済学部, 教授 (70009554)
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Keywords | ニーチェ / モダニティ / ナショナリ / 耽美主義 / フーコ / ハイデガ / 植民地的折代化 |
Research Abstract |
本年度はハイデガーの形而上学批判とフーコーの近代批判におけるニーチェの影響について集中的に研究を行った。ハイデガーは、第一次世界大戦後の危機の時代に書いた『存在と時間』で、近代の価値を越えて、遥かな過去のアルカイックなギリシアの再生を図るという『悲劇の誕生』のニーチェのモチーフを、キリスト教の原点にさかのぼりキリストの生活を繰り返すというキルケゴールの思考と結びつけた。やがて、ナチスの時代に、ハイデガーは技術批判という観点からニーチェの「力への意志」の思想を批判的に摂取し、こうした科学による力の追求を至上とする近代の奥底にひそむ「力への意志としての形而上学」という運命をえぐり出した。だが、この思想はナチスの残虐行為を批判的に捉え得るものでもなければ、戦後の西ドイツにおけるアウシュヴィッツの過去との対決を促すものでもなかった。むしろ、そうしたものから目をそらす機能を持っていた。その関連で、ニーチェのニヒリズムの概念が意図的に用いられた。 それに対してフーコーは、戦後フランスにおけるヘーゲル=マルクス的な歴史哲学の挫折が出発点であった。彼は、表面的なレジスタンス神話とリベラリズム的自己満足に飽き足らず、われわれの社会の根源にある暴力や破壊を取り上げた。同時に、近代は、いかなる解放の言説にもかかわらず、規律と取り締まりがますます厳しくなる時代と見る視角を提示した。その枠で、残虐をめぐるニーチェの思想が、またリベラリズムの浅薄さを暴露するニーチェの考古学的かつ系譜学的方法が受容されることになる。フーコーの構築主義的は批判的思考を通じて、ニーチェの歴史的・文化的相対主義は国際的な重要性を獲得した。 この観点から日本支配下の学校制度をフーコーを用いて批判的に捉え直す韓国の歴史学などもある程度研究することができた。
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Research Products
(2 results)