2010 Fiscal Year Annual Research Report
ペラギウス派神学の起源とオリゲネス主義からの影響に関する文献学的・思想史的研究
Project/Area Number |
20520078
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
山田 望 南山大学, 総合政策学部, 教授 (70279967)
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Keywords | ペラギウス派 / オリゲネス主義 / バシレイオス / アクイレイアのルフィーヌス / アクイレイアのクロマティウス |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に検証したオリゲネス主義の中でもエヴァグリオスの修道実践とペラギウス派の倫理的、実践的教えとの間に依存関係に引き続き、研究実施計画の中で提起した2)と3)、すなわち、ルフィーヌスが翻訳したバシレイオスの諸著書とペラギウス派の著書との間に依存関係や共通する倫理的、修道的態度が見られないか、という問題、ならびに、アクイレイアのクロマティウスの著書、とりわけ小論(tractatus)や説教(sermo)、『マタイ福音書注解』との間で何らかの共通する概念が展開されていないかを中心に検証作業を行った。 その結果、ペラギウス派文書に見られる「知恵」の理解や、人間に内在する「神の似姿性」とそれを質的に感化し強化する「キリストの模範」との力動的関係、さらには、神の義や神の善を具現化して行く担い手としてキリスト者はキリストの掟を実践する責務を担っているとの理解においても、大バシレイオスの『修道士大規定』や『聖霊論』などの主要著書との緊密な関係の存在することが明らかとなった。 さらに、バシレイオスの著書の多くをラテン語に翻訳したアクイレイアのルフィーヌスと同時代にルフィーヌスの先輩として活躍した、アクイレイアのクロマティウスの著書との思想的共通性も明らかとなった。とりわけ、ペラギウスやペラギウス派が繰り返しその著書の中で展開した「キリストの模範」、「諸聖人の模範」、「パウロの模範」などに表される「模範」と「模倣」の概念をクロマティウスも同様に強調し、何度もその著書の中で用いていることが明らかとなった。とりわけ、「キリストの模範」の重要性を説いている点はペラギウス派とまさしく軌を一にするものであり、キリストの模範の行使する働きかけによって、キリストが身を以て体現した神の義と神の愛とがキリスト者の行為の内に再現されるとの理解は、ほぼペラギウス派のものと同じであると見なして間違いはない。したがって、ペラギウス派の思想史的起源の有力な一つとして、アクイレイアのルフィーヌスとアクイレイアのクロマティウスという二人のアクイレイアの司教たちの思想を挙げることができよう。 本年度は、以上の成果について、6月に開催された「日本宣教学会」と9月に開催された「キリスト教史学会」においてそれぞれ異なった観点からの発表を行った。
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Research Products
(3 results)