2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520081
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
荒井 経 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 准教授 (60361739)
|
Keywords | 美術史 / 日本画 / 技法材料 |
Research Abstract |
近代岩絵具の開発と普及の基礎資料となる「商品目録」のうち主要な9点を東京芸術大学紀要に活字化し、研究者間の資料共有を図ることができた。また、近代岩絵具については、東京文化財研究所、永青文庫、熊本県立美術館の共同研究に参加し、本研究において最重要作品に絞り込んだ横山大観<山路>の非破壊科学分析を実施することができた。この成果は、平成23年度の文化財保存修復学会において発表を予定している。 近代日本画用の和紙については、先行研究において、大正末から昭和初期に集中的な開発が行われたことが知られているが、その意義づけには、背景にあった壁画制作の需要と国内外の壁画研究および模写事業についての把握が必要であることがわかり、研究の展開に向けた資料収集と問題点の整理に着手した。 さらに、本研究では、国内での文献および作品調査と並行して、中国への近代岩絵具の波及を現地で調査してきた。本年度、本研究の成果を踏まえた研究組織が東京芸術大学の研究者を中心に発足し、科学研究費補助金基盤B海外学術調査に「中国における「岩彩画」の登場と戦後日本画のメチエ」(代表:関出)が採択された。第一回公開研究会では、先行研究となる本研究の成果を発表した。 絵画材料に焦点を当てることで近代日本画のアイデンティティー形成を読み解くことを試みた本研究は、最終年度にあたる本年度までに当初の目的であった近代における岩絵具と和紙の開発年代と普及年代をほぼ特定することができた。現在、成果公開のための文章化を進めている。また、中国への技法材料の伝播についても基礎的な成果をあげ、先述の基盤B海外学術調査(研究分担者として参加)に発展的な引き継ぎができた。
|
Research Products
(3 results)