2009 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本版画の世界進出と国際交流―展覧会・コレクター・作家交流―
Project/Area Number |
20520089
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
桑原 規子 Seitoku University, 人文学部, 准教授 (90364976)
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Keywords | 美術史 / 日本美術 / 版画 / 国際情報交換 / アメリカ / 占領期 |
Research Abstract |
戦後日本版画の世界進出と国際交流の実態を、展覧会・コレクター・作家交流の視点から明らかにするため、まず国内では昨年度に引き続き、占領期から1970年代までを視野に入れ、国内・海外で行われた版画展覧会目録、アメリカ人コレクターに関する資料、英語版技法書・紹介書・新聞記事の収集を進め、一覧を作成した。さらに、その中でもとりわけ重要と思われる人物、オリヴァー・スタットラーとエリーズ・グリリについては、収集した資料をもとに彼らが戦後日本版画の評価向上に果たした役割の分析を試みた。その結果、スタットラーが1956年に上梓した『Modern Japanese Prints』と『Asahi Evening News』の美術紹介記事、エリーズ・グリリが担当した『Japan Times』美術批評欄が在日欧米人にとって日本版画を知る重要な役割を果たしていたことが判明した。また、彼らの活動が国内に留まらず、海外においても日本版画ブームを引き起こす一因となったことが再確認できた。2009年8月に行った海外調査(ボストン)では、ボストン美術館日本美術部の協力を得て作品・資料の調査を行い、戦後同館で行われた日本の版画展資料を収集した。その結果0日本の版画界を代表する作家恩地孝四郎の遺作展を早くも1956年に開催していることが判明し0数多くの版画作品が収蔵されていることが確認できた。またボストンでは、エリーズ・グリリの長男ピーター・グリリ氏、日本美術研究者エレン・コナント氏に聞き取り調査を行い0戦後日本に滞在していたころの生活や美術関係者のネットワークについて貴重な情報を得ることができた。来年度は展覧会やコレクターの情報に加え、作家同士の交流についても作品分析の視点から研究を進める予定である。
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Research Products
(1 results)