2010 Fiscal Year Annual Research Report
大西克禮における西洋美学の批判的受容と日本人の立場からの体系的美学の構築
Project/Area Number |
20520090
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大石 昌史 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (60223723)
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Keywords | 美学 / 西洋美学 / 日本美学 / 比較思想 / 美的範疇 / 芸術精神 / 自然感情 / ロマン主義 |
Research Abstract |
研究の第三年次(最終年次)に当たる平成22(2010)年度は、昨年度から引き続き大西克禮による西洋・日本美学研究について、それぞれの典拠となる原典と比較・検討するとともに、彼の思想展開における「総合期=東西の美意識の体系的総合に努めた時期」に分類される美学研究の諸著作(遺稿)も考察の対象とした。今年度新たに考察の対象とした著作は、『美學』(上・下)、『浪漫主義の美學と藝術観』、『東洋的藝術精神』の三作(四冊)であり、これらの著作を対象に、美的体験論と美的範疇論とに二分される体系的美学の構成、美の特殊類型として東西の美的範疇を相関的に捉える態度、そして、東西の美意識の比較研究(比較美学)の内実について詳細に検討した。さらに、本研究を総括する形で、日本人の立場から東西の美意識を統合した体系的美学の構築という大西の試みが、歴史的ならびに現代的な観点からいかなる意義を有するかを総合的に考察した。 これらのテクスト読解と併行して、やはり昨年度から引き続き、国内(東京およびその近郊)にある西洋近代美学ならびに日本美学関係の資料の収集・整理に努めた。また、当初は、今年度も、大西が1927年から28年の留学中に滞在したヨーロッパの都市を訪問し、その文物・風土について調査する予定であったが、日程的にそれが不可能となったため、日本の美意識を特徴づけ、また日本的な自然感情を喚起する風景・庭園等の映像資料を記録・収集・分析することに努めた。 これらの研究の概要は、平成22年6月5日、美学会・東部会例会(慶應義塾大学)において、「大西克禮と超越論的美学」と題して発表した。また、大西の美意識論を批判的に継承した研究代表者独自の見解を、同年8月9日、XVIIIth International Congress of Aesthetics in China(Beijing,Peking University)において、"The Logic of Imagination"と題して発表した。
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Research Products
(2 results)