2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520095
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
太田 孝彦 Doshisha University, 文学部, 教授 (70098169)
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Keywords | 桃山時代の絵画 / 江戸時代の絵画 / 狩野探幽 / 『徳川実紀』 / 『松平大和守日記』 / 御用絵師 / 『探幽縮図』 / 雪舟 |
Research Abstract |
今年度は、課題である「江戸時代のおける絵画の鑑定・評価・価格」の研究を、まず、桃山時代から江戸時代へと絵画は如何なる変容をなしたかを再確認することから始めた。その結果、豪放で雄大な画面に絢爛で豪華な雰囲気をたたえていた絵画は、繊細で瀟洒な画面となり洗練された抒情的なものへと変化したことを認識した。 次ぎに、こうした画風展開を如何に評価していたかを『徳川実紀』と『松平大和守日記』などの文献に探った。その結果、探幽の新しく生み出した画風の評価は高かったことが確認できた。それは、単に言葉で賞賛されているだけではない。将軍たちは彼を御用絵師に抜擢し、多くの作品を制作させたり、あるいは彼に画技を倣って自らも彼の画風で実際に絵を描いているのである。このことは、将軍ばかりではなく武家たちの評価でもあった。こうして、江戸時代初期に確立した瀟洒なものを高く評価する絵画観が江戸時代を通じて継承されることになったのである。 この探幽たちが新しい画風を生み出した頃、中世の絵画が、とりわけ雪舟の絵画が注目を集めていた。その流通は圧倒的な数量と格段の価格をもっていたことが『探幽縮図』によって知られる。そして、この『探幽縮図』に見いだされる鑑定のあり方を分析することによって、この時代は、必ずしも真筆ばかりが価値を持っているとは限らず、雪舟の作品は、写しでも、偽物でも、ある価値を備えたものと鑑定されていた。 こうした鑑定の態度が何を意味するのかは、今年度は明らかにすることができなかった。次年度は、こうした態度が語ることをこの時代に編纂された画人伝、画史類によって明らかにしたい。
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