2009 Fiscal Year Annual Research Report
画像データベースの解析に基づく星曼荼羅の成立と展開の研究
Project/Area Number |
20520097
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
松浦 清 Osaka Institute of Technology, 知的財産学部, 准教授 (70192333)
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Keywords | 星曼荼羅 / 北斗曼荼羅 / 仏教美術 / 密教絵画 / 黄道十二宮 / 占星術 / 古天文学 / 画像データベース |
Research Abstract |
調査ならびに撮影について、これまで許可を得られていなかった星曼荼羅(北斗曼荼羅)所蔵寺院のうち、今年度は京都・醍醐寺について、調査と撮影が許可された。撮影条件にいくつかの制限が設けられたため、星曼荼羅を構成する各星宿の部分図については、鮮明なフィルム映像を得ることができなかったが、デジタルデータ化して画像処理をおこなうことで、一定の品質の映像資料を確保することが可能となった。図像の分析を進め、これまで入手した他の星曼荼羅の画像データベースと比較することで、星曼荼羅の成立と展開を考察するための貴重な資料となる。また、京都・松尾寺の終南山曼荼羅についても調査を実施した。新規撮影については許可を得られなかったが、終南山曼荼羅の各構成要素を図像的に分析するための材料として、松尾寺所蔵のデジタル映像をもとに作成されたプリント資料の提供を受けた。松尾寺本については、当面この映像資料をもとに図像解析をおこない、必要に応じて新規撮影の許可申請をおこなう。一方、星曼荼羅の構成要素である黄道十二宮の受容背景を検討するため、国内、国外の各種博物館施設が所蔵する古天文学ならびに占星術・暦法関連資料や天文観測機器を調査した。黄道十二宮は西洋占星術の枠組みを形成する極めて重要な概念で、その基盤には数理天文学の発展があったため、星曼荼羅の研究では西洋天文学の発展全般を視野に入れることが前提となる。従来の仏教美術(密教絵画)の研究では、仏典の枠内で造形を理解しようとする傾向が強かったが、星曼荼羅の研究の場合は、その枠を超えて数理天文学の領域にも踏み込む姿勢が不可欠となる。古天文学等に関する各種映像資料の収集を通じて、オリエント天文学から近代西洋天文学の展開の中に星曼荼羅を位置づけるという、東西文化交流史の新たな視点が必要であることを改めて強く認識した。
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