2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520105
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森田 直子 Tohoku University, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (40295118)
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Keywords | コミック / テプフェール, ロドルフ / 国際情報交換 / フランス |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本および海外のコミックの文化的・社会的ステイタス獲得(またはその挫折)のプロセスを1. コミックの学術的研究の歴史2. コミックと芸術の制度や機構とのかかわり3. コミックにおける「娯楽」的側面と「啓蒙」「教育」的側面という3つの観点から比較・考察するもので、20年度は特に2と3にかかわる研究を行った。具体的には、ヨーロッパ・コミックの原型となるような作品を1830年代から発表していたスイスの作家ロドルフ・テプフェールを対象とするものと、1990年代以降の日本マンガの海外受容を対象とするものに分けられる。テプフェールに関しては、「版画物語」の一作品『フェステユス博士』(手稿1829、初版1840)の「小説」形式への自己翻案(1833、1840)の実験によって明らかになったジャンルごとの芸術的ステイタスの差異という問題、および最晩年の理論的テクスト『観相学試論』(1845)における「版画物語」の芸術的・教育的意義と描線画によるコミュニケーションの効率性の主張について検証した。日本マンガの受容に関しては、世界第二のマンガ消費国であるフランスにおいて、1990年代以降マンガの社会的イメージや文化的ステイタス、実際の受容のしかたにどのような変遷が見られるのかという問題についての先行研究を検証するなかで、ブルデューなどの芸術社会学の手法や、インタビューによる質的分析などの方法論の有効性を認識した。対象とする国と時代が異なっていても、コミック(的表現)に対する社会からの反応にはある共通した特徴が見られる反面、メディアと通信技術の発達した現代において、コミックの社会に及ぼす影響力が格段に増大し、激しい拒絶反応なども経たうえでコミックの文化的認知が今やかなりの程度獲得されていることが確認された。
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Research Products
(5 results)