2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520105
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森田 直子 Tohoku University, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (40295118)
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Keywords | コミック(ス) / テプフェール,ロドルフ / フランス |
Research Abstract |
本研究の目的は,日本および海外のコミックの文化的・社会的ステイタス獲得(またはその挫折)のプロセスを 1.コミックの学術的研究の歴史 2.コミックと芸術の制度や機構とのかかわり 3.コミックにおける「娯楽」的側面と「啓蒙」「教育」的側面 という3つの観点から比較・考察するものである。21年度の研究は、主としてスイスの作家ロドルフ・テプフェールをモデルケースとして進めた。テプフェールは、教育者・アカデミー教授としての自分自身の社会的ステイタスと、文化的な位置づけの曖昧な「版画物語」創作とのあいだの折り合いをつけるにあたって、ゲーテやサント=ブーヴなど著名作家からの評価を利用してパリという「文芸共和国」への参入を試みると同時に、版画物語を「文学」と位置づけるためのさまざまな理論武装を行った。ヨーロッパ・コミックの原型となるような作品を1830年代から発表していたテプフェールの文化的闘争を詳しくたどることで、スイスおよびフランスにおけるコミックスの文化的認知の困難さを形作っていたさまざまな文化的背景を知ることができた。現代における日本および海外のコミックスの文化的認知をめぐっては、会議参加を通じて国際的なコミックス研究の展開の現状に触れる機会にめぐまれ、とりわけ日仏両国におけるコミックスと諸芸術との関係、子ども観、大学制度、歴史記述の観点から今後のコミックスの学術的研究のあり方に関する問題提起を行った。(ここ一、二年で、さまざまな文化圏に属するマンガの総称として、英語のcomicsのカタカナ表記「コミックス」が普及しつつあるため、研究課題での表記を補って「コミック(ス)」または「コミックス」と記述したところがある。)
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Research Products
(6 results)