2009 Fiscal Year Annual Research Report
ハプスブルク帝国下のチェコにおける宮廷社会と音文化の展開
Project/Area Number |
20520123
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
内藤 久子 Tottori University, 地域学部, 教授 (60263456)
|
Keywords | 宮廷カペレ / チェコ・バロック音楽 / ルドルフII世 / ハプスブルク帝国 / 声楽ポリフォニー / プラハ宮廷 / ボヘミア / カンツィオナール(聖歌集) |
Research Abstract |
本研究は、16世紀末の後期ルネサンスから17・18世紀のバロック期に、ハプスブルク帝国下のチェコ諸領邦において展開された絶対主義王制時代の宮廷文化、特に音芸術の発展に焦点を当てて調査・研究するものであり、同時代のチェコ・ルネサンス音楽およびチェコ・バロック音楽の諸相を、それらの表象文化を取り巻く宮廷社会や政治状況、またハプスブルク帝国側の諸政策との関わりの中で読み解きながら、同時代における中欧文化の様態について明らかにすることをめざすものである。 本研究の2年目となるH21年度では、前年のH20年度に行った中欧史研究を踏まえた上で、16世紀末から17世紀初頭に在位したルドルフII世の治世時期における芸術文化の発展に注目し、特に都市プラハを中心に、14世紀以来、再びヨーロッパ文化の重要地点となり、きわめて豊饒なチェコ文化を開花させて後期ルネサンス文化の栄華を導いたその様相を、宮延音楽のみならず、教会音楽(即ち、聖歌集であるカンツィオナール研究)も含めて、プラハの音楽生活の実態を明らかにすべく、中欧文化に関する文献の収集を行うとともに、それらの諸文献を丹念に読み進めてきた。チェコにおける後期ルネサンス文化の研究は、きわめて複雑かつ深い内容であることから、次年度も継続して行う予定であり、次年度にはまとめの段階に入る計画である。 第二の研究成果となるのは、ハプスブルク帝国下のチェコ諸領邦における宮廷の文化史に関する研究であり、17世紀に同諸領邦各地の宮廷で展開された宮廷楽士団、即ち「宮廷カペレ」の活動実態について明らかにしたものである。とりわけ盛期バロック文化を熟成に導いたモラヴィア中部の宮延文化について『地域学論集』にその成果を纏め発表した。即ち、バロック期のチェコ社会と音楽文化の展開をハプスブルク帝国の文化政策を踏まえつつ、1620年の壊滅的な「白山の戦い」後に、最も優れた音楽文化創成の地となった「オロモウツ・カペレ」に見る音楽文化の卓越した諸相を、同時代のイタリア音楽とも比較しつつ、そらした普遍的なヨーロッパ文化の地平で、ヨーロッパ周縁文化の創成が前者に匹敵するレベルを誇っていたことに着目するとともに、改めで「中心と周縁」といら視座からヨーロッパ芸術文化のダイナミズムについて再考するに至った。これらの研究成果を踏まえ、次年度では、とりわけ18世紀ボヘミアにおけるバロック文化の特質について考察を行うつもりである。
|
Research Products
(1 results)