2010 Fiscal Year Annual Research Report
ハプスブルク帝国下のチェコにおける宮廷社会と音文化の展開
Project/Area Number |
20520123
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
内藤 久子 鳥取大学, 地域学部, 教授 (60263456)
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Keywords | 都市プラハ / チェコ・バロック音楽 / ルドルフII世 / 宮廷社会 / 声楽ポリフォニー / ハプスブルク家 / ボヘミア文化 / カンツィオナール(聖歌集) |
Research Abstract |
本研究は、16世紀末の後期ルネサンスから17・18世紀のバロック期に、ハプスブルク帝国下のチェコ諸領邦において展開した絶対主義王制時代の宮廷文化、とりわけ「音芸術」の発展に焦点を当てて調査・研究するものであり、同時代の「チェコ・ルネサンス音楽」ならびに「チェコ・バロック音楽」の諸相を、それらを取り巻く宮廷社会や政治との関係の中で読み解きながら、ハプスブルク家やボヘミア諸領邦の動向を背景とした人文主義の開花について歴史的洞察を深め、同時代における中欧文化の様態を明らかにすることをそのねらいとしている。 本研究の3年目に当たるH22年度では、第一に、昨年度より継続の「ルドルフII世統治時代の都市プラハ」を中心に展開していった人文主義思想と後期ルネサンス音楽の発展の諸相について、「都市と音楽」の視点から読み直すとともに、第二に「チェコ・バロック音楽の発展と宮廷社会の関係」を、ハプスブルク家の属国を決定づけた「白山の戦い」(1620)後の疲弊した17世紀のチェコ音楽を取り巻く社会と、ローマ・カトリック教会の強力支配というきわめて限定された条件下での声楽ポリフォニー発展の諸相を中心に、それらがルネサンス・ポリフォニーの技法を踏襲しつつ、同時に民俗音楽の語法を駆使しているという点を重視しながら、「17~18世紀チェコ音楽における受難の歴史」として『月刊都響』に纏めた。第三に、ボヘミアにおける後期バロック音楽と宮廷社会の有り様について、18世紀を代表する英国旅行家チャールズ・バーニーの旅行記を参照しながら、教育制度を含む都市プラハやモラヴィアの音楽生活の実態を少しずつ解明することが出来たといえる。バーニーの文献を読み解く作業は次年度も継続するつもりであるが、そうした文献研究を通して、プラハにおける後期ルネサンスの宮廷文化の繁栄から、17~18世紀被支配が強化された時代にみるボヘミアの文化的状況を歴史的に明らかにしつつ、都市の発展状況と音楽文化の発展の様相が相互に連動しながら、いかにして19世紀の文化ナショナリズムの発展を内発的に促すことが可能となったのかを検証する意味でも、ハプスブルク帝国下のチェコ社会と音楽文化の発展を研究する意義はきわめて重要であると考える。
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Research Products
(3 results)