2011 Fiscal Year Annual Research Report
ハプスブルク帝国下のチェコにおける宮廷社会と音文化の展開
Project/Area Number |
20520123
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
内藤 久子 鳥取大学, 地域学部, 教授 (60263456)
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Keywords | チェコ・ルネサンス音楽 / チェコ・バロック音楽 / 都市プラハ / ルドルフII世 / 宮廷カペレ / ボヘミア文化 / チャールズ・バーニー / ハプスブルク家 |
Research Abstract |
本研究は、16世紀初頭以降、約400年に及ぶハプスブルク帝国支配下のチェコ諸領邦において展開された宮廷社会を中心に、宮廷文化としての「音芸術」の発展に焦点を当てることで、16世紀末の後期ルネサンス音楽から17・18世紀のバロック音楽の諸相を、政治史や社会史、文化史とともに読み解きながら、ハプスブルク家やボヘミア諸領邦内の動向を背景とする人文主義の開花について深く洞察することにより、同時代の「中欧文化」の歴史を明らかにしようとするものである。 本研究の最終年度となるH23年度では、「チェコ・ルネサンス音楽」、「チェコ・バロック音楽」の有り様を、近現代のチェコ音楽への礎石とみる視点から体系的に洞察した。まず第一に、16世紀末ルドルフII世の統治時代における「都市プラハと声楽ポリフォニーの発展」について詳細に跡づけ、第二に、18世紀英国の旅行家Ch.バーニーのボヘミア紀行に描写された社会史的記述を読み解くとともに、当時のボヘミアやモラヴィアの文化的状況について明らかにした。第三に、19世紀「国民楽派」に至るまでの、まさにチェコ音楽の歴史的創成の動態性について、(1)チェコ・ルネサンス文化の隆盛と都市プラハの発展史、(2)チェコ・バロック音楽と地方都市での「宮廷カペレ」の実態、(3)チェコ・プロテシスタント勢力による亡命地での前古典派音楽の発展、(4)ローマ・カトリック教会の優勢と都市プラハの「文化的再生」の試み等、入手した多くのチェコ語文献や独語文献を駆使しながら、ハプスブルク帝国チェコ諸領邦にみる音文化の特質が、いかに19世紀のチェコ音楽へと昇華されていったのか、どのようにヨーロッパ文化全体の発展と関係づけられるのかを『Philharmony』誌等に纏めた。このように中欧の小国チェコの音文化の知られざる歴史を、まさにヨーロッパ文化史の中に位置づけ、解明を試みた本研究の意義は、きわめて重要と考える。
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Research Products
(3 results)