2010 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀後半のイタリア諸都市とウィーンのオペラ公演におけるレパートリーの相関関係
Project/Area Number |
20520124
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
松田 聡 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (60282547)
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Keywords | ウィーン / フィレンツェ / ミラノ / オペラ公演 / モーツァルト |
Research Abstract |
本研究は,ヨーゼフ二世とレオポルト二世という2代の皇帝が統治した1765年8月から1792年2月までのウィーンにおけるイタリア・オペラ公演について,そのレパートリーがイタリアの主要5都市(ナポリ,ローマ,フィレンツェ,ヴェネツィア,ミラノ)とどのような関わりにおいて形成されたのかを追求するために,各都市のオペラ公演についてのデータベース作成とその分析を通じて,それらの間にどのような相関関係があるのかを明らかにしようとするものである。3年目である平成22年度には。1783年4月から1791年2月までのウィーンとフィレンツェ,ミラノにおけるオペラ公演にかんするデータを入力した上で,それらを中心に考察し,研究のまとめを行った。ウィーンの宮廷劇場では1778年4月以降,イタリア・オペラの公演がなかったため,1783年4月にそれが再開するに当たって,レパートリーを急遽揃える必要が生じた。そのレパートリーは,当初はイタリアの特にヴェネツィアやローマで初演されたものが大半を占めていたが,それらは直接移入されたというより,フィレンツェあるいはミラノを経由してウィーンに入ってきたものと思われる。この事実は,ウィーンが同じハプスブルク家領であったイタリアの2つの都市に依存しつつ,公演を開始したことを強く示唆する。しかし,その公演が軌道に乗り,オリジナルの新作も多く発表されるようになると,フィレンツェやミラノへの依存という側面は弱くなり,むしろそれらの都市でウィーン初演のオペラが上演されるようになる。このように,レパーリー形成における都市相互の関連の歴史的変遷の一端が,この研究で明らかになった。
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