2008 Fiscal Year Annual Research Report
第一高等学校寮歌の研究-寮歌にみる音楽文化活動の西洋化の過程-
Project/Area Number |
20520133
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Research Institution | Tokyo College of Music |
Principal Investigator |
下道 郁子 Tokyo College of Music, 音楽学部, 准教授 (50421110)
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Keywords | 教育史 / 音楽文化史 / 教育学 / 芸術諸学 / 西洋音楽受容史 |
Research Abstract |
本研究の目的は第一高等学校を代表例として、旧制高校の教養教育を基盤として生まれた当時の学生文化を、寮歌の活動を軸に考察するものである。初年度は研究計画に従い、(1)寮歌の作曲者、作詞者、旋法や調性、リズムや拍子、形式、音域、数字譜と五線譜の関係等から音楽的特徴を明らかにする、(2)寮歌を作曲する等旧制高校の音楽活動の中心的役割を担った学生の経歴や活動を調べ、当時の音楽教養人や音楽愛好家の姿を明らかにする、(3)第一高等学校の教育理念や内容と、寮歌及び音楽文化活動の関わりを考察することを目標とした。まず明治23年から45年までの第一高等学校の寮歌110曲の楽曲分析を行い、楽曲の西洋化の過程を明らかにした。また明治時代の第一高等学校の高校生達の音楽活動全般を、学科課程、校友会活動、寮歌に分類して、文献資料から考察し、(1)寮歌及び校友会の音楽部の活動が、唱歌教育の影響を少なからず受けている、(2)運動部の対校戦が、応援歌、部歌を育んだ、(3)部活を通した旧制高校の交流が寮歌を全国的に広める要因になった、(4)寮歌及び企画音楽会についての評論が校友会雑誌上で活発に行われた等を検討した。また、第一高等学校の教養教育を重視した教育内容や、全寮制による自治寮での人間教育が、寮歌を中心とした自発的な音楽活動を盛んにした要因として理解された。 当初の予定通り、研究発表は国際学会と国内学会の合計2回、論文は1本執筆した。 同窓生への質問用紙の発送と回収は行わなかったが、同窓会主催(一高玉杯会)による春と秋の寮歌祭に参加、多くの寮歌の実演を録画によりデータとして記録した。また卒業生との交流により実体調査が進み、さらに卒業生と会友で結成された寮歌研究会の方々とも知り合い、情報交換が行える場や人脈を得ることができたとともに、寮歌を歌い継ぐという活動にも参加することとなった。
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