2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520141
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
清瀬 みさを Doshisha University, 文学部, 准教授 (00367963)
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Keywords | 橋梁 / 名橋 / 景観 / 風景 / 京都 |
Research Abstract |
本研究の目的は、隔てられたふたつの空間をつなぐ装置である「橋」が、単なる機能を越えてどのように景観の構成に関わっているかということを、美学的、芸術学的な観点から明らかにすることにある。西洋と日本に存在する、あるいは存在した現実の橋梁、文学や美術作品に現れる橋を比較検討しつつ、最終的な研究課題は日本近代の都市景観、とりわけ景観条例の中で看過されている京都の都市景観と橋梁の関係を再考することにある。 平成20年度は主として西日本の名橋を調査し、架設が強く望まれ、機能美があり、周囲の景観形成の要となり、歴史的・文化的なランドマークとなっていることを検証した。21年度は、形式的、歴史的、文化的に独自性を橋梁がもつと判断される橋梁についての資料収集を行い文献資料の蒐集とともに実地調査した。具体的には東京、金沢、山口(防府、小野田、萩、長門湯本、床並)、島根(津和野、松江、出雲、石見)、鳥取、広島、岡山(倉敷)、香川(高松、琴平)、兵庫(城崎、明石、神戸)、滋賀(坂本、瀬田、堅田)における道路橋、歩道橋、社寺仏閣および城の庭園、近代以降に設置された公園などの橋梁である。 それらの調査から、石の刎ね橋という独自の橋梁文化の残る旧長州においても、結界としての象徴性の高い橋梁には石造、木造の素材を問わずアーチ橋(太鼓橋、反り橋)が採用されていることが確認された。また庭園においても、複数の異なる形式の橋梁が「景」をつなぐ要素として工夫されている中で最も重要な景観の要がアーチ橋であり、庭園の絵はがきのメインとなっていることも確認された。さらに、現代においても、それら橋上で新郎新婦が記念写真を撮影する定番スポットとして利用されている事例が多く存在することも注目された。橋のたもとではなく橋上であるのは、名園の中心的な景であり、かつ渡り初め式とおなじ象徴的な意味が継承されている風俗であると考えられる。
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