2009 Fiscal Year Annual Research Report
後期上方読本の成立における実録の影響についての研究
Project/Area Number |
20520164
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田中 則雄 Shimane University, 法文学部, 教授 (00252891)
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Keywords | 読本 / 後期読本 / 上方読本 / 実録 |
Research Abstract |
実録が後期読本に及ぼした影響について探究するにあたり、実録・読本それぞれの様式を把握することを意図して研究を行った。 まず実録における普遍的と言ってよい様式を探るため、あえて地方出来の実録を研究対象とした。出雲国で作られた実録『三巴八雲の敵討』に即して、敵討という、実録において多く取り上げられる素材が、地方の作者の手によっても、他の一般的な実録と共通の様式に沿って作品化されるという事例を明らかにした。全体の構成、人物の人間性の造形など、一定の記述の形を意識する中で作られていることが、同一事件について記す史料等との対比によって解明できた。 また実録のもう一つの主要素材である御家騒動を扱う地方出来の実録の事例として、同じく出雲国で作られた『雲州橘之巻』に即して、特に人物の造形において作者特有の捉え方に沿って描写しており、そのことがあるゆえに実録としての様式が保たれていることについて論究した。 さらに江戸読本作者の曲亭馬琴の作品に関して、人物の内面の把握のあり方が作品の長編構成を支える枠組に規定されていることを論じた。ここでは直接実録との影響関係には論及していないが、この論の結果を前提として、この枠組に実録的素材が如何に取り入れられるかという問題について、次年度以降探究することとなる。
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Research Products
(3 results)