2010 Fiscal Year Annual Research Report
後期上方読本の成立における実録の影響についての研究
Project/Area Number |
20520164
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田中 則雄 島根大学, 法文学部, 教授 (00252891)
|
Keywords | 読本 / 後期読本 / 上方読本 / 実録 |
Research Abstract |
後期読本の重要な典拠の一つに〈実録〉があり、その本格的利用は、上方作者・速水春暁斎の〈絵本もの〉読本に始まる。この春暁斎の記述体(構成の型)が、この後の実録依拠の読本へと踏襲されていることを、前年度までの研究において解明した。 本年度の研究によって、この記述体が、上方読本が江戸読本と融合を始める文化5、6年(1808、09)頃以降も存在し続け、文政期(1818~)に入ってからも、上方作者たち(好華堂野亭、文亭箕山など)による実録依拠の読本に継承されていることを明らかにした。そして更には、江戸作者が上方へ入って来て、上方作者と交流しながら、実録依拠の読本を執筆していることを把握した。『忠臣山賤伝』(文政9年(1826)刊)は、江戸作者・桃華園三千丸が、上方の楠里亭其楽の校正を受けて刊行した作品で、実録の『玄同水滸伝』に拠る。ただし実録を大きく改変して、読本の様式に転換している。 一方で、典拠の側に位置する実録の様式についての解明を行い、実作品の分析によって、実録特有の記述のあり方とは何であるかを把握した。実録における虚構は、作者が捉えた人物観、時代観などを一定の方向に沿って強調する意図のもとで施されていることを明らかにした。
|
Research Products
(2 results)