2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世歌謡と絵画および意匠との関わりをめぐる総合的研究
Project/Area Number |
20520188
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
植木 朝子 Doshisha University, 文学部, 教授 (10272741)
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Keywords | 今様 / 中世小歌 / 狂言 / 中世絵画 / 意匠 |
Research Abstract |
中世前期の今様を対象として、特に法華経二十八品歌と経旨絵の比較検討を行った。化城喩品から普賢菩薩勧発品にいたるまでの二十二品について、法華経本文と今様、経旨絵、和歌を比較し、そこから導き出される今様の特色を明らかにした。検討した諸品のうち、湧出品については、文章にまとめて発表した(「梁塵秘抄注釈 第三回」<『梁塵 研究と資料』第25号)。その他、今様起源譚との関わりから、聖徳太子絵伝の調査を行い、火星の精の描かれ方について考察した(「今様起源譚の展開」<『同志社国文学』第70号>)。 また、絵画の動物表現と中世芸能の関わりとしては、特に「梟」と「烏」に注目して調査を行った。中世後期の芸能である狂言の、「梟」という作品においては、「梟」の霊を「烏」の印で退治するという言説が見られるが、これまでなぜ梟退治に「烏」の印が用いられるのかは明らかにされていなかった。しかし、周辺の文学作品を調査すると、梟と烏は、天敵同士であるという事実により、仏典や昔話の中でも、不仲なものとして語られてきたことが確認できる。狂言はそれを踏まえていると言えよう。さらに、中世絵画の中に、複数の烏が、梟を襲う擬攻(モビング)の様子が描かれているものを発見することができた。このように、梟と烏の敵対関係は、文学、絵画の諸分野において取り上げられ、人々によく浸透していたことがわかる。狂言「梟」における「烏」の印は、観客にとって納得のできるものであり、巧妙に選ばれたものだったと言えるのである。この研究成果は「山伏狂言の印-茄子・烏・蕗-」として発表した(『藝能史研究』182号)。
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Research Products
(3 results)