2009 Fiscal Year Annual Research Report
中世歌謡と絵画および意匠との関わりをめぐる総合的研究
Project/Area Number |
20520188
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
植木 朝子 Doshisha University, 文学部, 教授 (10272741)
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Keywords | 今様 / 中世小歌 / 中世絵画 / 意匠 / 文様 / 能 |
Research Abstract |
中世後期の室町小歌を対象として、特に、「花筏」「花車」「花靱」など「花」+器物という成り立ちを持つ言葉について、意匠・文様との関わりを考察した。美術史においても、そのような意匠・文様の文学的背景について触れられることはあったが、そもそもの用例の解釈が誤っている場合も多かった。本研究では小歌がある意匠・文様の成立に深く関わっている場合、あるいは逆に、小歌に含まれる一語が、意匠・文様の世界と響き合って豊かなイメージを獲得している場合、小歌の解釈と絵画の解釈が連動する場合などの具体的事例を指摘した。この研究成果は、2009年6月6日、日本歌謡学会において「室町小歌と意匠・文様の世界」と題して講演し、その内容を『日本歌謡研究』第49号(2009年11月)にまとめた。 絵画の動物表現と中世歌謡の関わりとしては、鼬に注目して調査を行った。『梁塵秘抄』には、鼬が笛を吹くと表現した童謡風の一首が収められているが、『鳥獣人物戯画』の模本には、まさに笛を吹く鼬の姿が描かれている。今まで指摘されていなかったが、歌謡と絵画に共通する発想として注意される。『鳥獣人物戯画』を見直すと、これまで子狐とされてきた数匹の動物が鼬であると確認でき、これらはいずれも、手を胸より上にあげた姿で描かれている。文学作品の中で「鼬の目陰」と表現される、目の上に手を翳すような動作が絵画化されている場面もあり、そのような姿から笛を吹く鼬の姿も自然に連想されたものと思われる。動物の習性のどのような点に注目するかについて、絵画と歌謡の共通性が指摘し得るのである。この研究成果は『梁塵秘抄の世界-中世を映す歌謡-』(角川学芸出版2009年12月)II第三章第一節の中に取り込んでいる。
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Research Products
(3 results)