2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520189
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中本 大 Ritsumeikan University, 文学部, 教授 (70273555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒木 祥子 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (10107120)
山本 一 金沢大学, 学校教育系, 教授 (40158291)
二本松 泰子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 客員研究員 (30449532)
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Keywords | 鷹書類 / 持明院家の鷹書 / 小坂円忠 / 禰津松鷂軒 / 禰津神平貞直 / 源斉頼 |
Research Abstract |
本研究の研究代表者(中本大)と研究分担者(黒木祥子・山本一・二本松泰子)が発起人となっている「鷹書研究会」において、8月2日と12月5日の2回にわたって、国立公文書館内閣文庫・宮内庁書陵部・尊経閣文庫に所蔵されている持明院家の鷹書について精査した。その結果、公家流の鷹の家として中世期によく知られた当家の鷹書類について、奥書に記載されている年記の上限が永正年間であることや伝本同士の転写が中世後期から近世初期(承応年間頃)の期間に最も盛んに行われていたことが確認できた。そのことによって、中世~近世にかけての持明院家の鷹書類の成立の実相や流布の過程が具体的に解明され、公家の鷹の家における放鷹文化の一端が明らかになった。 また一方で、武家の鷹術についても、その実相を究明するべく、諏訪流の鷹書類を中心に調査を進めた。具体的には、室町時代を通じて足利将軍家に仕えた小坂円忠系の在京諏訪氏の鷹書類や徳川家康に重用された禰津松鷂軒に関わる鷹書類を重点的に検討した。松鷂軒は信濃国小縣郡禰津(現・長野県東御市)に居した滋野氏の一族で、江戸時代に代々徳川幕府に仕えた鷹飼はいずれも全てこの松鷂軒の流れを汲む。調査の成果としては、たとえば、円忠系の在京諏訪氏は『諏訪大明神画詞』に象徴されるように、「禰津神平貞直」を当家の鷹術の祖と仰ぐ伝承を携えており、一方の松鷂軒系の鷹術伝承については宮内庁書陵部蔵『鷹之書啓蒙集秘伝』(函号163-1326)に窺えるように、「源斉頼」を同家のシンボリックと伝えていたことが確認できた。すなわち、従来は「諏訪流の鷹術」として一括されていた当該の伝派であるが、その内実としては足利将軍時代の在京諏訪氏の鷹術と徳川将軍時代の松鷂軒系の鷹術とで異同があり、厳密に分類されるものであることが判じられた。これによって、武家の鷹術には、ときの将軍家に基づく位相を見せることが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)