2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520189
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中本 大 立命館大学, 文学部, 教授 (70273555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒木 祥子 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (10107120)
山本 一 金沢大学, 学校教育系, 教授 (40158291)
二本松 泰子 立命館大学, 文学部, 講師 (30449532)
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Keywords | 鷹書 / 鷹狩り / 諏訪流放鷹術 / 鷹匠 |
Research Abstract |
本年度も、例年通り鷹書研究会での活動を中心に研究を進めてきた。具体的には、同じく例年通り第5回放鷹文化講演会「鷹狩文化と祢津氏」(11月20日)を長野県東御市において、第6回放鷹文化講演会「三河・鷹丘 鷹狩りのふるさと」(12月3日)を愛知県豊橋市において開催した。 具体的な研究成果としては、中世期において鷹書が果たした文化的な役割の一斑を明らかにすることができた。たとえば、16世紀半ば頃に活躍した東国土着の武士の児玉経平が制作したテキストは類型化した説話を引用する際、敢えてモチーフを違えた「異伝」を掲載する傾向がある(二本松泰子「東国武士の鷹術伝承-児玉経平の鷹書と『月庵酔醒記』記載の鷹関連記事をめぐって-」『中世<知>の再生』所収、三弥井書店、2012年)。これは地方武士の携えた鷹書としては非常に珍しい。というのも、一般的に地方に伝来した鷹書はいずれも京都近辺で流布した鷹術伝承を忠実に取り込み、地方で喧伝する媒体として利用されることが多いからである。そのため、児玉経平の鷹書のような京都風の鷹術伝承をなぞる記載が一切ない地方武士のテキストは希少なものとして注目に値する。なぜ、このような独自のテキストが制作されたのかについては、彼の鷹術がいずれの流派にも属さず、むしろ「関東鎌倉殿の御鷹匠」(『政頼流秘書鷹りやう治次第』等)を自称する立場から固有の主義主張を発信していった所以であることが察せられる。このように鷹書はその機能として「京都文化の発信媒体」以外にも、鷹術に関する鷹匠個人の主張を示すテキストとして利用された事例を確認することができた。その他の成果についても研究代表者・分担者がそれぞれのテーマに即して論文化し、本年度末に刊行した冊子形態の研究成果報告書(科研費報告書)に掲載した。
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Research Products
(5 results)