2011 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカのジャポニズム文学とアフリカン・アメリカン・モダニズムの関係性
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20520234
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
中地 幸 都留文科大学, 文学部, 教授 (50247087)
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Keywords | ジャポニスム / モダニズム / アフリカン・アメリカン / トラウマ / 俳句 / トランスナショナリズム / リチャード・ライト / 移民 |
Research Abstract |
1.米国ミシシッピー大学出版局から出版されたThe Other World of Richard Wright : Perspective on His Haikuに論文"From Japonisme to Modernisn : Richard Wright's African American Haiku"(134-147)を発表した。 2.アジア系アメリカ文学研究会の年次大会で「パキスタン系作家Kamila ShamsieのBunrt Shadowsにおける移動する主体と傷の共有」を発表。これは論文としてAALAジャーナルにも発表した。トランスナショナリズムと移民の問題を考察した。 3.エミリー・アプターの論文「翻訳不可能なもの」を翻訳。トランスナショナリズムと翻訳および文化翻訳の問題を論じた論文で、これは『世界文学史とはいかにして可能か』(成美堂)に収められた。 4.アフリカ系アメリカ人女性作家ポーリン・ホプキンズの作品における奴隷制のトラウマを考察し、モダニズムに至るアフリカ系アメリカ人文学を読み解いた。発表は台湾花蓮にある東華大学で行い、論文は同大学のウエブ上に掲載された。ホプキンズは新心理学をよく勉強しており、モダニズムの萌芽がすでに見られる。 5.論文「「模倣と剰窃の異国ロマンス-アメリカ・ジャポニスム小説と『作者』」を『作品は「作者」を語る-アラビアン・ナイトから丸谷才-まで』(春風社)の第三章として執筆した。「蝶々夫人」型ジャポニスム文学が書き換えられる様、エスニック・マイノリティや外国人文学者(野口米次郎など)のアメリカ・モダニズムへの貢献を確認した。 6.リチャード・ライトの俳句論を"The Sound of Silence : Zenand Bluesin Richard Wright's Haiku"というタイトルで中国杭州の浙江大学にて講演した。アフリカン・アメリカン・ジャポニスムを考える上で、ブルースというアフリカ系アメリカ人芸術ジャンルとの交錯を考えることが重要であることを再確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リチャード・ライトの俳句を通し、アメリカのジャポニスム文学とアフリカ系アメリカ人によるモダニズムの関係は結び付けられた。またモダニズムの問題としてのトランスナショナリズム、それに伴う移民経験、戦争体験の影についても考えることができた。しかし、黒人ミカド劇についての論文やプリミテフィヴィズムの考察に関してはまだ継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
アフリカ系アメリカ人モダニズムとジャポニスムの関連性を調べるために、もう少し美術分野を調査する必要を感じている。昨年大正期の新版画運動について調べ、その世界的影響を考える機会を持ったが、版画からポスターあるいは挿絵といったものへの影響は、プリミティヴィズム、ドイツ表現主義、ロシア構成主義、キュービズム、イタリア未来派などへの目配りも必要なこともわかり、美術分野への調査もさらに拡大したいと考えている。
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Research Products
(8 results)