2009 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀アメリカ小説における動物表象の科学史・文化史的研究
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20520237
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
佐久間 みかよ Wayo Women's University, 言語・文学系, 准教授 (00327181)
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Keywords | アメリカ文学 / メルヴィル |
Research Abstract |
本年度は、メルヴィルを中心に東西文化交流という観点で動物表象について考察した。特に絵画を通した影響、物質文化の影響という点に留意し、メルヴィルが聖地巡礼を行い、中近東、地中海沿岸諸国を旅した経験をもとに制作した長編詩『クラレル』という作品の読解を行なった。19世紀に米国からみて東洋熱ともいえる異国への関心が指摘されるが、これを動物表象の観点で見る時、単なる関心におわらない東洋理解が進んだことと捉えられ、これを作品で跡づけられたのが成果である。『クラレル』という作品はメルヴィル自身の聖地巡礼をかねた旅での東洋理解と、絵画や旅行記を通した影響のもとに書かれた当時の巡礼者の物語である。エルサレムという東西の文化、宗教が交錯する地で、作品の着想を得て、ここを舞台にした際、動物たちの描写に東西交流の様がうまく描き出されている。中近東という場での文化と宗教の対立を19世紀作家がどのように捉えたかを、動物と人間の関係の描き方から再構築できたと考える。動物と人間が一体になった生活をしている様を描く、その自然描写は、西洋的な役畜としての動物という人間中心的な見方にはない、動物と人間が融合する東洋的自然観を作家が発見している点として指摘した。これは、異なる思想を理解する以前に、その自然観の違いを人間と動物の関係を通じて理解するという異文化受容の一端であり、それをもとに宗教、制度の違いを超えた人間理解へとつながる契機となると考えられる。これらを資料調査で跡づけ、その成果の一部を日本英文学会全国大会シンポジウムにおいて発表し、その要旨を日本英文学会発行の『プロシーディングズ』に発表した。さらにこれを発展させ、メルヴィル国際学会(於エルサレム)で、発表した。その後口頭発表をもとに資料を整理し、論文発表の準備が本年度においてできた。
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Research Products
(3 results)