2008 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半から20世紀初めのロシアにおける身体と表象の関係の構造転換
Project/Area Number |
20520281
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
番場 俊 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90303099)
|
Keywords | ロシア文学 / 表象文化論 / 身体 / 告白 / メディア / ドストエフスキー / ロシア・アヴァンギャルド |
Research Abstract |
19世紀後半から20世紀初めのロシアにおける身体と表象の関係の変容を明らかにするために、本年度は次の研究をおこなった。 1.北海道大学附属図書館および同スラブ研究センター、東京国際大学第1キャンパスで資料調査をおこない、19世紀後半から20世紀初めにかけての「告白=自白confession」の変容に関する資料、身体をめぐる諸科学(心理学・生理学・反射学)とロシア・アヴァンギャルド芸術の関係に関する資料を蒐集した。 2.19世紀後半において、身体が文学的・医学的・法的言説が交差する争点となっていたことを明らかにするために、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』(1879-1880年)および『作家の日記』(1873、1876-1881年)をとりあげた。とりわけ『作家の日記』1876年10月〜12月号において集中的に現れる女性の身体(継子殺害未遂事件の容疑者コルニーロヴァのアフェクトの身体、ゲルツェンの娘およびモスクワのお針子ボリーソヴァの自殺者の身体、短編小説「おとなしい女」の女主人公の身体)に注目し、当時の医学・心理学の言説と絡めながら検討した。 3.ドストエフスキーの肖像画・肖像写真について、彼の作品中に現れる肖像や肖像画論と関連づけながら検討し、写真と言語テクストという、原理的には相容れない二つのメディアのあいだに生じうる関係について検討し、論文にまとめた(平成21年度に刊行予定)。 4.フロイト、バフチン、ヤンポリスキーらの理論的著作について、ドストエフスキーやマレーヴィチらの具体的な作品分析を通じて、その妥当性を検討した。そこで浮かび上がってきた新たな問題は、身体と時間の関係(精神分析における「事後性」と小説における「現在」の関係、マレーヴィチと生理学的身体における「明滅」する時間)である。
|