2009 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半から20世紀初めのロシアにおける身体と表象の関係の構造転換
Project/Area Number |
20520281
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
番場 俊 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90303099)
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Keywords | ロシア文学 / 表象文化論 / ドストエフスキー / 告白 / 文学と法 / 子審判事 / 文学とオペラ / 手紙と声 |
Research Abstract |
19世紀後半から20世紀初めのロシアにおける身体と表象の関係の変容を明らかにするために、本年度は次の研究をおこなった。 1.北海道大学附属図書館および同スラブ研究センター、ならびにモスクワのロシア国立図書館(РГБ)で資料調査をおこない、ドストエフスキーにおける「告白」の変容と1860-1866年の司法制度改革に関する資料を蒐集した。 2.19世紀後半から20世紀初めの身体の変容を明らかにするために、ロマン主義からリアリズムの初期に至るその前史に注目し、ドストエフスキーの『白夜』(1848年)をとりあげて大都市の遊歩者に関するヴァルター・ベンヤミンの分析や同時代の観相学の実践との関係を探るとともに、作中で言及されるロッシーニのオペラ『セビリアの理髪師』を手がかりにして、「手紙と声」、「素顔と変装」、「生活の芸術化」といったテーマに関するジャンル横断的な分析に取り組んだ。 3.ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』(1879-80年)を当時の社会状況にてらして理解するために、ロシア史上もっとも有名な政治裁判の一つであり、ドストエフスキー自身も傍聴して、『カラマーゾフの兄弟』における法廷シーンの発想源の一つとなったザスーリチ裁判(1878年)の検討をおこなった。 4.19世紀後半における文学的「告白」と法的「自白」の関係を明らかにするために、ドストエフスキー『罪と罰』(1866年)の登場人物ポルフィーリー・ペトローヴィチに注目し、пристав следственных дел(捜査担当官)という彼の職務名に対する従来の「予審判事」という訳が不適切であることを明らかにし、物語の舞台である1865年のペテルブルクにおいて「捜査担当官」という過渡的な職責が巻き込まれていた複雑な言説的磁場を分析したうえで、小説家と法律家が互いに対してとりうる構造的な関係について考察した。
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Research Products
(2 results)