2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520301
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
濱野 耕一郎 青山学院大学, 文学部, 准教授 (80383496)
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Keywords | 仏文学 / 1930年代 / 2月6日事件 / 政治 / ジョルジュ・バタイユ / アンドレ・シャンソン |
Research Abstract |
所属機関である青山学院大学の在外研究制度を利用してフランス・パリに滞在した本年度は、昨年度末に着手したジョルジュ・バタイユ論(仏語)とアンドレ・シャンソン論(仏語)をそれぞれ完成させて公表したほか、昨年度に引き続き、ピエール・ドリュ・ラ・ロシェルの作品の読解を進めた。 『カイエ・バタイユ』誌創刊号に寄稿した論考では、小説『空の青み』(1935)冒頭の数ページを取り上げて分析を試み、一読した限りでは1930年代の政治的状況と無関係に思われるこの「序論」部分に、政治的意味を読み取ろうとした。20年代中頃にその原形が執筆されたこのテクストも、1934年のヨーロッパを舞台とする『空の青み』に組み込まれることで、政治性を帯びる結果となっているのだ。他方、『ステラ』誌に掲載したシャンソン論では、作家が2月6日事件を題材にして執筆した小説『懲役船』(1938)を分析し、主人公の抱えるジレンマのうちに、文学活動と政治活動のあいだで引き裂かれた当時の作家たち(シャンソンはそのひとりに過ぎない)のジレンマを読み取った。また、このシャンソン論執筆にあたっては、新聞『ヴァンドルディ』(シャンソンが創刊者の一人)や1938年7月の作家会議記録(シャンソンの発言を収録)などの資料をフランス国立図書館で閲覧したが、その過程において、既存のシャンソン研究の書誌からは漏れたテクストを複数「発見」する幸運にも恵まれた。 なお、以上のシャンソン論執筆に予定していた以上の時間を要したため、ドリュ・ラ・ロシェルの読解作業から具体的な成果を挙げることはできなかった。来年度以降の課題としたい。
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Research Products
(2 results)