2008 Fiscal Year Annual Research Report
漢代五言詩歌の伝播とその文学的昇華の過程に関わる研究
Project/Area Number |
20520335
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
柳川 順子 Prefectural University of Hiroshima, 人間文化学部, 准教授 (60210291)
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Keywords | 中国文学 / 五言詩 / 漢代詩歌 / 古詩 / 古楽府 / 李陵・蘇武 / 『楚辞』九歌 / 曹操 |
Research Abstract |
1、文人による五言詩の祖と目される古詩について、その原初的な作品群(原初的古詩の推定はすでに公表済み)の性格を、『楚辞』九歌との関係性を手がかりに考察した。『楚辞』九歌が、前漢時代、後宮の女性たちを交えた宴席において、実際に歌舞劇として演じられていたらしいことを推定し、原初的古詩が、表現面においてこれと深い影響関係を持つことを検証した上で、古詩の始原的性格を娯楽文芸と推定した。 2、古詩の一亜種と推測される、李陵・蘇武の名に仮託された連作の五言詩について、後漢末の建安詩、及び古詩・古楽府(漢代詠み人知らずの詩歌)との影響関係を分析することにより、その成立年代を後漢時代中期頃と推定した。また、本詩群中に見える表現面での諸特徴から、その成立の場を宴席と推定した。傍証として、李陵・蘇武の物語が、当時の宴席で、歌舞を伴って実際に演じられていた可能性が高いことをも指摘した。 3、古楽府の生成展開の場が宴席であったこと、そうした文化的風±が後漢末に至ってもなお広く士人社会を覆っていたことを確認し、士人社会に対する曹操のスタンスを究明した上で、曹操における楽府詩制作の意図について考察した。 以上の三つの論究を通して、漢代五言詩歌の生成発展の場が宴席であったことを明らかにし、その延長線上に登場したのが建安文壇ではないかという見通しを立てた。これは、従来の定説とは異なる見解である。
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