2009 Fiscal Year Annual Research Report
漢代五言詩歌の伝播とその文学的昇華の過程に関わる研究
Project/Area Number |
20520335
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
柳川 順子 Prefectural University of Hiroshima, 人間文化学部, 准教授 (60210291)
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Keywords | 中国文学 / 五言詩 / 漢代詩歌 / 古詩 / 古楽府 / 建安詩 / 宴席文学 |
Research Abstract |
以下の三つの論究を通して、特に後漢時代における五言詩歌の具体的展開状況を明らかにした。その考察結果は、いずれも従来の定説とは異なるものである。 1、従来、その類似性が指摘されてきた漢代の古詩・古楽府・蘇李詩(李陵と蘇武の詩)と建安文人たちの五言詩について、その類似句を洗い出し、相互の継承関係を検証した。この基礎的な作業により、建安の五言詩は、漢代五言詩歌史の延長線上に位置づけられるべきものだという見通しを付けることができた。また、昨年度に推測した、漢代五言詩歌史上に占める蘇李詩の位置についても、この作業によって確証を得た。 2、漢代の古詩と古楽府との関係は、民間歌謡たる古楽府から、文人の手になる古詩が派生したと見るのが一般的であったが、両ジャンル間における類似句の継承関係を分析することにより、この通説に疑義を呈する新たな論を提示した。古楽府の中には、民衆の歌に出自を持つもの以外に、明らかに古詩を踏まえて成ったものが存在することを指摘し、かかる古楽府は、宴席に集う文人たちを媒介に、古詩と古楽府とが出会うことによって成ったのではないかという仮説を提示した。 3、古詩は、古くから格別に尊重されてきた一群(第一古詩群と仮称)と、それには属さない諸篇とに分けて考えることができるが、この後者の作品の中から、明らかに第一古詩群を踏まえて成ったと認められるものに焦点を当て、その作者像、成立年代、そうした作品の誕生を可能とした文学史的背景について考察した。
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Research Products
(2 results)