2010 Fiscal Year Annual Research Report
漢代五言詩歌の伝播とその文学的昇華の過程に関わる研究
Project/Area Number |
20520335
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
柳川 順子 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (60210291)
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Keywords | 中国文学 / 五言詩 / 漢代詩歌 / 古詩 / 古楽府 / 建安詩 / 宴席文学 |
Research Abstract |
○後漢時代における五言詩歌の展開について、調査・考察の結果を次の二つの論文にまとめた。 1. 古詩(漢代無名氏による五言詩)数十篇の中でも別格の一群(第一古詩群)が編成された時期やその経緯を、作品の分析や作品相互の影響関係を究明することによって明らかにし、更に、この推測を歴史的資料と照合させながら、この詩群の成立が知識人社会における五言詩の流布に歴然たる影響を及ぼしたことを指摘した。 2. 古詩との影響関係がしばしば指摘される古楽府(漢代無名氏による俗楽歌辞)について、その中に古詩からの影響が明らかに認められるものがあることを指摘し、この両ジャンルの関係は、従来言われてきたように、古楽府から古詩へという単線では捉えきれないものであり、もともと別個に発生した古楽府と古詩とは、後漢のある時期以降、宴席という場において、相互に影響し合いながら展開していったということを論証した。 ○漢代五言詩歌史について、これまで考究してきたことを体系化して論述し直し、その中で、後漢時代末に出現した建安文壇の文学史的意義についても、今後の考察に向けて次のような糸口を示しておいた。 3. 建安文壇の主催者とそこに集った詩人たちとの関係性の中に、漢代宴席文芸の延長線上にある部分と、飛躍する部分との双方が混在しており、これが社会における貴族制の成立と連動していることを指摘した。 4. 文学を、見知らぬ他者に向けて発せられる、個人の切実な思いに根差した言語表現と定義づけた上で、その萌芽を、公宴の場に身を置きながら、私的立場で詠じられた建安詩人たちの五言詩の中に読み取った。
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Research Products
(2 results)