2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520352
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
氏平 明 Toyohashi University of Technology, 留学生センター, 教授 (10334012)
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Keywords | 中国語(北京方言) / 中国語吃音 / 口吃協会 / 非流暢性サンプル / 発話の背景のサンプ / 音節 / 声調 / アクセント核と第4声 |
Research Abstract |
1)中国語の吃音サンプル収集のため、東北師範大学に出向中の東京外国語大学準教授の花薗悟氏(東京言友会:日本の吃音者のヘルプセルフグループ)を通して中国口吃協会(吃音者のヘルプセルフグループ)の北京支部とチチハル支部と連絡をとり、吃音の録音が可能かどうか、打診した。また西安と上海での吃音サンプル収集の可能性を探った。 2)北京で中国の口吃協会と日本の言友会の交換会が決まり、日本の言友会を代表して花薗氏が参加、氏平も随伴して「吃音:言語学的・音声学的分析-日本語・英語・朝鮮語-」を講演した。口吃協会北京支部の会長の発話のみに録音許可を得たので、彼の自然発話からの吃音サンプル250例、その背景の発話約5000語をSONYPCM-D50を用いて,サンプリング周波数48KHz,16ビットで録音した。 3)録音した吃音の非流暢性サンプルと背景の発話サンプルを漢字、ピンイン(中国式ローマ字)、声調、ならびに非流暢部分の特定マークの記述を、東北師範大学の日本語と北京方言に精通する学生に依頼した。その記述についての信頼性確保は、言語学、音声学の専門知識を有する第三者によって非流暢性サンプル120例で100%の一致を得た。 4)日本語吃音のアクセントの偏りと録音採取した中国語(北京方言)吃音の声調の偏りに注目し、それらを比較対照した。日本語(京阪方言)の第1モーラを繰り返す吃音では第2モーラにアクセント核があるものが有意に多く(p<0.01,χ^2検定)、中国語も非流暢性が生じている第1音節ではなくそれに後続する第2音節に第4声が有意に多発する(p<0.002,χ^2検定)。この第4声は日本語のピッチアクセントの下降と同様で、そこにアクセント核があるとも考えられる。すなわちピッチアクセントの日本語と声調言語の中国語(北京方言)で吃音の同様な傾向が見られることが明らかになった。これは吃音者が発話において後続する超分節的特徴に囚われていることを示唆している。この結果を第5回琵琶湖音韻論フェスタで発表した。
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