2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520405
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
今里 典子 神戸市立工業高等専門学校, 一般科, 准教授 (90259903)
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Keywords | 日本手話 / 類辞 / 連続動詞構文 / 文法化 / 移動構文 / 使役移動 / 虚構移動 / 書記方法 |
Research Abstract |
日本手話(以下JSL)の類辞(以下CL)を含む様々な構文のデータを、JSLネイティブの協力を得て撮影し、これを記述する書記方法を提案し実行した。このデータ利用して、動詞とCL、及び動詞間の共起関係とその意味及び機能の変化を詳細に分析した。移動対象が自発的に2点間を動くようなシンプルな移動表現にとどまらず、「使役移動」や「虚構移動」など、複雑な出来事や抽象的な移動と認識される表現も分析対象とした。その結果、基本的な移動構文で観察されたように、使役移動および虚構移動でも、一つの様態動詞と2つの経路動詞の組み合わせで連続動詞構文をとることが基本的であり、さらに経路動詞のうち、後に現れる動詞は、二定の環境下で文法化し、移動以外の幅広い意味を表現することを可能にする事を明らかにした。ただし使役移動の場合には、一般的な移動表現とは異なり、必ずしも「方向一致制限」が守られる訳ではないことを観察した。「虚構移動」表現においては(1)多くの音声言語と同様に「見る」という意味を表す動詞が利用され、a)視覚的放射、b)映像の移動、c)注視点の移動の3種類に加えて、a)c)の複合をあわせた4種類の表現が存在している事、(2)移動構文を下敷きに、「見る」という動詞が経路動詞として認識されることを見た。さらに(3)この動詞は文法化のプロセスを経て、主語や目的語に一致することのない動詞、例えば「知る」、「好む」、「嫌う」等の後または前に現れて、主語および目的語の指標としての機能を果たす事を確認した。これはFisher(1996)が指摘した「AUX」と同一の観察であるが、JSLの移動構文内において体系的に見られる、連続動詞の最後に現れる動詞の文法化のひとつの現象として捉えるべきであることを示唆した。
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Research Products
(4 results)