2009 Fiscal Year Annual Research Report
上代の戸籍・計帳の人名を古代日本語として解読する研究
Project/Area Number |
20520418
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
犬飼 隆 Aichi Prefectural University, 日本文化学部, 教授 (20122997)
|
Keywords | 古代語 / 人名 / 漢字 / 表記 / 意味 |
Research Abstract |
二年間の研究で八世紀日本の戸籍・計帳に記載された人名のほとんどについて語形としてのよみを施した。それに即して人名の古代日本語としての意味の付与も大部分は施した。並行して、その基礎となる七、八世紀日本における漢字使用の全体的な状況の解明をすすめた。その際、古代日本各地の資料だけでなく、古代の中国および朝鮮半島の資料に関する知見を収集し、比較対照することによって、解読の精度を高めるようにした。その結果、従来なら漢字運用の日本における訛りと単純にとらえられていた現象が、東アジア全体の漢字運用のなかに位置付けると、普遍性と独自性との両方をもっているとわかってきた。とくに、朝鮮半島においていったん固有語に即して成り立った用法が日本に輸入されたこと、それがさらに日本で固有語に即して直される場合もあったことが確実になった。戸籍・計帳の漢字用法もそのなかに位置付けられるので、もう一度吟味し直さなくてはならない部分が出てきた。具体的には、漢字の音読みと訓読みの用法を交えた表記が、朝鮮半島からの影響で行われた可能性が大きくなってきた。それをうけて、今までは漢字の字音語としての用法による命名を基本的に排除していたが、かなりの程度に認めなくてはならなくなった。「阿弥陀」「元量寿」という特殊な名は知られているが、他にも「恵師(絵師)」「法師」をはじめ、字音語を名全体や名の部分的要素とする例の存在を少なからず想定せざるをえない。「法縁」のように、和語にも字音語にも読んだ可能性をもつ例もある。最終年度でその点をできる限り訂正・補足する。
|