2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520419
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
丹羽 哲也 Osaka City University, 大学院・文学研究科, 教授 (20228266)
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Keywords | 基準点 / 連体修飾 / 助詞「の」 / 相対修飾 / 敬語 |
Research Abstract |
(1) 本年度は、名詞を基準とする構文、すなわち、連体修飾表現について詳しく考察した。 (ア) 助詞「の」による連体修飾表現は、修飾名詞が関係を内在するタイプ(「独身の女性」)、主名詞が関係を内在するタイプ(「私の母」)、どちらも関係を内在しないタイプ(「太郎の本」)の3つに大きく分かれること、「の」の関係は文脈によって自由に関係を構成すると言われることもあるが、それは、この3つ目の場合に言えることで、しかも、一定の制約があることを明らかにした。「の」の表現領域は非常に広大であるため、その類型化にはかなり困難が伴い、本研究も限界を抱えるが、統一的な観点で全体を秩序づける試みを提示することはできた。(イ) 相対補充連体修飾表現(「食事をする前」「旅行に行く準備」等)は、時間・空間上の位置関係や広義の因果関係を表すタイプを中心に論じられてきているが、本研究は、全体部分関係や範列関係を表すものなども合わせて考察を行い、かつ、助詞「の」による連体修飾関係との並行性を捉えることによって、相対名詞を主名詞とし、連体修飾節および「名詞+の」がそれを補充する関係として、統一的に把握できることを明らかにした。これらの研究は、体言を基準(中心)とする表現が、用言を基準(中心)とする表現とどのように異なるかという問題意識に基づくものである。基準(点)という概念は曖昧なものだが、それが構文によってどのように働くかというということを明らかにしていくことによってその内実に迫る、というのが本研究の方法である。 (2) また、敬語の基準点がどのように決まるかという問題について考察した。いわゆる絶対敬語から相対敬語へという歴史的変遷の中で、近世期はその両面が拮抗する時期である。浄瑠璃の詞章では、高身分の悪人に対して、敬語を使う絶対敬語的用法よりも、敬語を使わない相対敬語的用法が顕著で、それは その演劇的性格に由来することを論じた。
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Research Products
(4 results)