2010 Fiscal Year Annual Research Report
尚家文書の史料学的分析による近世琉球の国家と社会の特質に関する研究
Project/Area Number |
20520587
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
豊見山 和行 琉球大学, 教育学部, 教授 (40211403)
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Keywords | 琉球国 / 尚家文書 / 冊封・朝貢関係 / 冠船 / 生業史 / 身分制 |
Research Abstract |
本研究はく国宝に指定された「尚家文書」を史料学的に分析することを通して、近世琉球の国家と社会の特質の解明を主な目的とする。すなわち、近世の琉球国家の特質(主に対中国との冊封・朝貢関係の再検討による)と、琉球社会の特質(近世琉球固有の士族と百姓身分の二大区分制の再検討による)を「尚家文書」を活用することによって分析・検討することにある。 1、データ入力・整理による成果は次の通りである。「道光十八年冠船方子之方御規式井諸士出家江御膳拝領日記」(第66号)、「僉議」(第438号)、「両先嶋漁業一件」(第490号)に関するフルテキストデータを作成した。第66号は冊封儀礼という国家的儀礼に関係し、他の第438号は琉球社会の身分確定や王府官職に関連し、第490号は1876年という琉球処分直後の両先島における漁業問題の一端を示した文書である。これらのデータ化によって国家的儀礼と社会的問題の両側面を捉えることが可能となった。 2、今年度におけるマイクロフィルム撮影・紙焼きによる「尚家文書」の収集成果は次の通りである。「大和江御使者記」(201丁)、「御庖丁人江新家譜被下候僉議抜」(28丁)、「両先嶋御検使日記」(552丁)、「両先嶋御検使日記」(348丁)、「散形付並似例」(50丁)、「伊平屋玉御殿清明御祭祀」(70丁)、「冠船御礼式日記諭祭」(58丁)の7点、計1,307丁である。これらは修復後にマイクロ撮影が可能となったものであり、新たに琉球の国家と社会の分析の上で軽視しえない文書群を収集することができた。 3、本研究テーマに関して、国家論については「徐葆光の琉球来航(1719年)とその後」、社会論については「近世琉球の士と民(百姓)」および生業史の視点から「土地所有・雑物・喰実畑」を公刊し、本研究の成果の一部を表すことができた。
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Research Products
(4 results)