2008 Fiscal Year Annual Research Report
『郷土研究』時代における柳田国男の地方研究者の組織化
Project/Area Number |
20520596
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鶴見 太郎 Waseda University, 文学学術院, 准教授 (80288696)
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Keywords | 郷土 / 柳田国男 / 新渡戸稲造 / 『郷土研究』 / 牧口常三郎 / 郷土会 |
Research Abstract |
草創期にあった柳田国男の民俗学について、形成途上にあった研究組織にどのような特色があったのかに力点をおいて考察した。その際、大正末から昭和初年にかけて柳田民俗学を組織面から支えた民俗学者・社会主義者の橋浦泰雄が残した文書(書簡・フィールドノート・覚書など)を主たる資料とした。 村落社会で一部営まれる「原始共産制」の発掘を志して民俗学の道に入った橋浦であるが、その初発の動機付けは自分が調査地で接する郷土史家との間に政治的信条を超えた信頼関係となってあらわれ、そこから構築される人的結合は、おのずから物証を重んじる柳田民俗学の経験的な手法を組織面から支えることになった。この点については橋浦の大正末から前後二回にわたって行われた橋浦による五島列島(下五島)調査に顕著であり、「思想環境としての郷土研究-橋浦泰雄の民俗調査-」(『史林』92巻1号)の中で詳述した。 ここから抽出されるのは、「知識としての方法」というよりも、眼前におかれた民俗事象・郷土に対して調査者がどれだけ誠実に接することができるか、という意味で、「態度としての方法」という枠組を与えるのがふさわしい。『柳田国男入門』(角川書店2008年)では、第三章「民俗学が生む<方法>について」、第四章「思想への態度」、および第六章「“モヤヒ"の思考」において、柳田自身そのことを自らの方法として意識しつつ、全国的な郷土研究の組織を拡大していったと考えられる点を強調した。
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Research Products
(2 results)