2009 Fiscal Year Annual Research Report
『郷土研究』時代における柳田国男の地方研究者の組織化
Project/Area Number |
20520596
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鶴見 太郎 Waseda University, 文学学術院, 准教授 (80288696)
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Keywords | 郷土 / 柳田国男 / 新渡戸稲造 / 『郷土研究』 / 牧口常三郎 / 郷土会 |
Research Abstract |
雑誌『郷土研究』の編集、特に掲載された論文の性質、誌面構成を通じて、同誌の編集長である柳田国男がどのような地方研究者を想定していたかを検討した。その際、心がけたことは、民俗学・郷土研究における「方法意議」とは何か、という点である。組織的な郷土研究がまだ草創期の段階にあった、大正中期の文脈から判断すれば、集約的に効率よく調査対象を捉えるという知識・技術的な方法とは別個に、外部から研究者が調査地へおもむく際、どれだけ在地の研究者に敬意を持って対し、素材となる民俗資料を大切に扱うか、という態度の側面から見た方法意識の重要性を念頭に置く必要がある。 そのことによって、外からの調査者と内からの地方研究者との間に緊密な連絡関係が生まれるのであり、それこそが『郷土研究』誌上において地方研究者からの連絡・投稿を重視して掲載しようとした柳田が目指そうとしたものではなかったか、ということである。"内"と"外"双方の信頼関係を基盤とすることで、はじめて郷土研究のような経験に多くを依存する学問組織が成立する。この点については東筑摩郡の郷土史家・胡桃澤勘内、あるいは福島の高木誠一などにおいて特に顕著である。彼らに共通するのは、いずれも同時代の政治潮流に流されることなく、上記の「態度としての方法」を見につけた調査者を大切にし、側面から柳田を支えたことにある。この周辺事情を「方法として見る民俗学者の人生」と題して、小池淳一編『民俗学的想像力』(せりか書房2009年)に掲載した。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article]2009
Author(s)
鶴見太郎
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Journal Title
『民俗学的想像力』所収「方法として見る民俗学者の人生」(小池淳一編)(せりか書房)
Pages: 96-111