2011 Fiscal Year Annual Research Report
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20520604
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
井原 今朝男 国立歴史民俗博物館, 研究部, 教授 (20311136)
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Keywords | 即位下行帳 / 即位伝奏 / 即位惣奉行摂津元親 / 公方御倉 / 官務大宮時元 / 即位段銭 / 禁裏 / 室町殿 |
Research Abstract |
(イ)中世の禁裏が衰微した事例として後柏原天皇が1501年践祚してから即位式をおこなうまで22年間もかかった事例があげられてきた。今回、1501年後柏原天皇の即位式用途の財政帳簿である1501年即位下行帳、文亀元年(1501)即位式文書類聚、1511年即位下行帳、1518年即位諸司注進などの財政帳簿をはじめて翻刻・公開した。 (ロ)これによって、中世禁裏の財政運営は、朝廷の儀式伝奏と幕府の惣奉行とが共同執行していたことがあきらかになった。後柏原天皇の即位式用途は諸国段銭として越後・丹後・因幡などから徴収され、必要な財政支出によって準備がなされたが、その都度、幕府の将軍義高(澄)と細川政元との不和や、義材(尹稙)の巻き返しによる将軍家の内紛が即位式延期の理由であったことがあきらかになった。 (ハ)歴博所蔵の廣橋本・田中本と船橋清原家旧蔵資料の対比調査・研究をつづけ、伝奏甘露寺親長・伊長・元長と官務大宮時元の新出史料を発見し「年未詳大宮時元書状土代」(『日本歴史』748号2010)につづく、新出史料である「下請符集」を翻刻・公開した。 (ニ)職事弁官と官務・局務という朝廷の官僚機構と、惣奉行と武家奉行人という幕府の官僚機構とが、共同で、即位段銭の賦課・徴収・公方御倉への収納を行ったシステムをあきらかにした。即位式準備の当事者は、前払いした必要経費の請取状を即位伝奏に示して伝奏切符を発行してもらい、伝奏切符を幕府の惣奉行摂津氏と武家奉行人に提出して下書という承認をうけ、公方御倉に持参すると、必要経費が支出されるという下行システムをあきらかにした。「船橋清原家旧蔵資料に見る中世禁裏財政帳簿について」の論文を公開した。
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