2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520616
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
丸田 孝志 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (70299288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽田 三郎 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40106779)
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Keywords | 民俗 / 象徴 / 儀礼 / 秩序 / 国民統合 / 中国共産党 / 日本傀儡政権 |
Research Abstract |
日本傀儡政権と中国共産党(中共)根拠地の民俗・象徴・儀礼に関する政策を社会の動員・統合の問題から検討した。傀儡政権は「東方の文化道徳の発揚」を政権の正統性として掲げつつ、中国の民俗を日本の統治の論理に即して解釈、利用する政策を展開した。傀儡政権の象徴は、日本を中心とした「大東亜」の枠組みから離れることはなかった。傀儡政権の儀礼は、空前の密度と同時性をもって、占領地の民衆に国家の威容を示し続け、中国は主権国家たるべきであるという概念を人々に植え付けていくものであったが、政治道徳を中心とした動員手法は、民間心性と有効な接点を結ぶことができなかった。中共の民俗利用の宣伝動員活動は、大衆運動を通じて個別家庭の民俗を有効に組織し、祭祀・信仰の世界にまで浸透した。その浸透の原理は、近代日本の動員体制のように村落の共同体結合に権力が接合する形ではなく、村落の弱い保護機能を代替する会党の組織原理を利用して、秩序の崩壊により安全保障を求める民衆を組織していくものであった。ここで動員された大衆の心性は、個別家庭を基礎とする土地改革に対応して、家庭の祭祀の復興を目指すものであり、権力を獲得した貧雇農は儒教的階層秩序を肯定しつつ、その文脈で地位の向上を確認した。中共は模範の奨励・敵対者の処罰を通じて権威の象徴を操作し、権威序列を人々の忠誠心に連動した可変的なものとして提示した。このため、民衆は安全を確保するため、自らの序列を上昇させる必要に迫られ、中共は民衆の高度な動員に成功した。研究協力者は、伝統的な中国の政治権力の近代的再編に関わる問題として、立憲制度の導入問題を日本との交渉史の中で検討した。
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Research Products
(2 results)