2008 Fiscal Year Annual Research Report
聖人祝日暦写本の生成-ヴァチカン・オットボーニ・ラテン写本163番の総合的研究-
Project/Area Number |
20520641
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 彰一 Nagoya University, 文学研究科, 教授 (80131126)
|
Keywords | ヴァチカン図書館 / オットボーニ文庫 / ラテン写本163番 / 聖人祝日暦 / 修道院過去帳研究 / サン・マルタン修道院 / アゲリクス / アルテンプス大公 |
Research Abstract |
本年度は分析対象にしていたヴァチカン図書館所蔵オットボーニ・ラテン写本163番「聖人祝日暦」の解読・転写作業が、12ヶ月のうち5月までしか終了できなかった。今年度の作業は、これを完了し、さらにこの写本の作成地の同定作業を進めることである。 年度末にパリで面談した修道院過去帳研究の権威であるジャン=ルー・ルメートル教授は、この14世紀作成のオットボーニ・ラテン163番に先行する何らかの、より古い写本があったはずで、何らかの事情でそれが伝来しなかったために、14世紀という遅い時代の作成になる写本が、「Tres Idus Aprilis (4月11日)」に「トゥールのサン・マルタン修道院院長アゲリクス」なる記載を含む最古の写本として伝来している可能性を示唆した。少なくとも大陸においては、大量に作成された聖人祝日暦にその記載が全く見当たらない事実に鑑みて、イングランドという限られた世界でのみ、「アゲリクス」についての伝承が生き続けた可能性が高い。この問題を解きほぐす手がかりの一つは、ヴァチカン図書館に収蔵される前の所有者であったローマ貴族アルテンプス大公家が、これをどこから入手したかを明らかにすることである。アルテンプス家所蔵文書の調査が必要である。他方において、中世イングランドの聖人祝日暦系統の写本作成と伝来状態についての調査をする必要性が益々重要な作業であることが明らかになった。
|
Research Products
(7 results)