2009 Fiscal Year Annual Research Report
海の論理からみたイングランド中世史(10世紀から13世紀)の再検討
Project/Area Number |
20520647
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鶴島 博和 Kumamoto University, 教育学部, 教授 (20188642)
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Keywords | 中世 / イングランド / 海 / 漁撈 / 魚 / 漁具 / 漁民 / 生業 |
Research Abstract |
魚に関するデータ・ベースの作成に関しては、Household Accounts from Medieval England , 2vols, ed. C. M. Woolgar (1992)と、Records of the Wardrobe and Household 1285-1286 (HMSO, 1977)を基本史料にして、中世に食された魚と価格のリストを作成した。そこから抽出できた魚種は淡水と海水のものをあわせて172種(codとcodlingのように成長にしたがって名前の変わるものも含めて)であった。できるだけイングランド原産の相当魚種の画像データをつけたが、まだ不完全であり今後の課題とした。したがってまだ公開する精度にいたっていない。また、同史料から漁師、漁法、魚屋などの史料も得ることができた。今後、これらに関するデータをより積極的に収集していく必要がある。漁法に関しては、Derek Coombe, Ffshermen form the kentish shore (1972)などの19世紀から20世紀にかけての地域における漁の実態を描いた図書から多くのデータを得た。イングランド東岸の海岸地帯における漁具に関するデータを考古学的成果やグレート・ヤーマス、ファヴィシャム、ヘイスティングズなどにある博物館から得ることができた。また地元の古書店に残る19世紀の漁師や漁の写真、絵葉書の収集は中世の漁撈に関するイメージを豊かにしてくれた。漁師の共同体に関しては,Sally Festing, Fishermen : a community living from the Sea (1999)から多くを学んだ。これらの研究成果は、いままで総合的に語られることのなかった、中世イングランドにおける海と関わった生業の実態を明らかにしていく一里程標と位置づけている。
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