2011 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦初期における米国核政策と被爆者・ヒバクシャ情報
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20520648
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
高橋 博子 広島市立大学, 広島平和研究所, 講師 (00364117)
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Keywords | 西洋史 / 日本史 / 政治学 / 残留放射線 / 病理学 / 核実験 / 被爆者 / ABCC |
Research Abstract |
本研究の目的は広島・長崎で収集された被爆資料が、米国政府によって冷戦政策の中でどのように利用され、いかなる核時代が作られていったのかを、近年公開された資料や広島・長崎の被爆者や核実験による被ばく者の証言の分析によって浮き彫りにすることである。 今年度は、1954年3月1日のビキニ環礁での米核実験で被災した第五福竜丸を初めとする米核実験によって被ばくしたマグロ漁船の乗組員の被災状況を明らかにするために、被ばく者側の証言を実験当局者である米原子力委員会の資料や日本人研究者側の資料から多角的に裏付けてゆく調査を進めた。1954年11月の日本学術会議主催の放射線の影響に関する日米会議を契機として、1954年末に厚生省はマグロ調査を終了する。本研究では、食料・水を通して入ってくる放射性物質による内部被ばくが、とりわけ日本においてどのように軽視され、現在に至っているのを、放射性降下物や内部被曝問題の専門家を矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授(内部被曝問題)を招いて検証した。さらに南海放送製作「わしも死の海におった」上映会を開催した。 さらに、高知県太平洋核実験被災センターなど共催して「ビキニ事件の真実と福島原発被災のいま-軽視される低レベル放射線内部被曝を考える」を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた論文に加え、2008年に出版した『封印されたヒロシマ・ナガサキ』の新訂増補版を出版できた。 また主催・共催の形で講演会・シンポジウムをいくつも開催し、大変な反響があり、研究者のみならず広く市民に対しても研究を公表する機会にめぐまれたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は放射線被曝の歴史という、福島第一原発事故以来一層関心の高まっている問題と密接にかかわるテーマのため、研究成果を学会、講演会、シンポジウム等でできるだけ早めに公開してゆく必要性を痛感している。高橋が研究全般を担ってはいるが、国内外の、とりわけ自然科学系の専門家の協力があるからこそ、掘り下げた研究ができると思うので、今後とも、自然科学系の専門家と協力し、様々な形でのヒバクシャの実態を浮き彫りにする研究活動をしてゆきたい。
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Research Products
(5 results)