2009 Fiscal Year Annual Research Report
鎖国期日本に輸入されたヨーロッパ・マジョリカ陶器についての考古学的研究
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20520673
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
松本 啓子 Osaka City Cultural Properties Association, 文化財研究部, 主任学芸員 (20344377)
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Keywords | 近世考古学 / 国際情報交換 / マジョリカ陶器 / オランダ連合東インド会社 / foglie文アルバレロ形壺 / 鎖国 / ルネサンス / 宗教改革 |
Research Abstract |
主題のマジョリカ陶器は、キリスト教の巡礼街道経由でイタリアからフランス、ベルギー、オランダへと伝播したとみられ、これまでこの巡礼街道沿いに大坂出土品との実物比較を行ない、その生産・使用状況を探ってきた。その結果、大坂出土品のようなマジョリカ・アルバレルロ形壺は、すべてが同じというものは未だ見つからないが、形態やfoglie文など、個々の要素は確かにここを通って伝播し、その生産・流通にはカトリックが大きく関与したのではないかと考えられた。そこで今年度は、対比資料としてドイツのマジョリカの検討を行なった。アウグスブルグは16世紀の宗教改革時のルター派プロテスタント発祥の地であるが、ここを含むドイツ南部は現在でもカトリックの勢力が強い。この地方のマジョリカはイタリア志向が強く、当時の輸入品が多く残る。しかし、大坂出土品のように個々の要素が個別に採用された在地のマジョリカ僅かながら存在し、この生産地と推定されるアーンシュタッドの発掘資料があるとの情報を得た。実物比較は次年度に持ち越しとなったが、大坂出土品がイタリアから陶工が移住した先で作った、いわば在地派生型のマジョリカである可能性が高まった。また、16世紀のカトリック絵画に、マジョリカによく描かれるI・H・Sモノグラムがあり、カトリックとマジョリカとの結びつきが文様においても確認されたことも今年度の大きな成果である。さらに今年度は、ヨーロッパのマジョリカの生産・流通・消費についての資料・情報を再検討し、『栄原永遠男先生退官記念論文集』に寄稿し、採用された(2010年秋に刊行予定)。
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