2008 Fiscal Year Annual Research Report
台湾先住民アミと漢人の生活実践にみる「民族」と「伝統」-身近な他者との交渉の諸相
Project/Area Number |
20520715
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
西村 一之 Japan Women's University, 人間社会学部, 助教 (70328889)
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Keywords | 文化人類学 / 台湾 / 伝統 / 民族集団 |
Research Abstract |
平成20年度の研究遂行に当たっては、台湾東部地域での現地調査を実施するとともに、関連研究機関などを利用しての史資料収集を以下の通り実施した。 現地調査については、先住民アミと漢人が交渉する領域としての漁撈を対象とした調査を実施した。日本植民統治期の産業開発を契機として形成された調査地の水産業は、日本人移民事業を中心に展開し、この時にアミと漢人の参入があった。さらに戦後大きく進展した近海漁業では、これら二つのエスニック集団出身の漁民が共同し、また競合してきた。現地調査に当たっては、漢人およびアミそれぞれのカジキ突棒漁船主・船長を対象とした聞き書きを実施した。彼らの間では、船長の地位を巡る共通認識があると同時に、保持する技術に対する高低や漁携実践上の駆け引きが、エスニックな語りとともに示される。なお、以下と関連して、カジキ突棒漁は今、調査地の「伝統的」漁法として、住人から認識されようとしている。また、漢人漁民とアミとの交換や売買について、特にこの二つの集団間の駆け引きについても調査を実施した。加えて、現地で進む過去の記憶や経験を、集落や民族集団の歴史として構築していく動きについて調査を開始した。例えば、大正年間に発生した、ある抗日運動が複数の地域で歴史化の対象となり、これを巡り様々な言説が生まれている。その中には、民族集団の間で交わされるものがある。加えて、独自の歴史や文化の保存伝承を目的とする民間団体が形成され活動を始めているが、その活動についても調査を着手した。 史資料収集については、国史館台湾文献館(南投県)および中央研究院(台北市)の関連研究機関を利用した。なお、各機関においては現地の研究者との研究交流も合わせて実施した。
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Research Products
(1 results)