2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520725
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
手塚 薫 Hokkai-Gakuen University, 人文学部, 准教授 (40222145)
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Keywords | 千島列島 / 千島アイヌ / 歴史生態学 / 島嶼生物地理学 / 集落・移住形態 |
Research Abstract |
当該年度は、千島列島における資源・土地利用の変遷を、集落・居住形態の変化から重点的に検討した。とりわけ、国内外における4回の学会で上記の成果に関わる研究発表も実施した。研究内容は以下の通りである。 千島列島は冷温帯の北海道から亜寒帯のカムチャッカ半島の間に南北1200キロにわたって位置し、大小様々なサイズの島から構成されている。活火山や海底火山が多数分布し、大型の島にも人類の居住好適地は限られている。2000年以来実施されているNSFの支援による日米露の国際学術調査によって千島列島全体におよぶ居住の断絶期が確認された。島嶼地域の場合、資源の連続性のある大陸部と違い、高度の航海技術が要求され、低いキャリングキャパシティに加え、希薄な社会ネットワークが特徴的であり、大陸の母集団で培った知識が新天地で通用しないなど、その環境に適応するのは困難とされる。また、大きく大陸に近い島は小さく遠い島より陸上の生物種が豊富であり、それを捕食する生物にとって有利でもある。先史遺跡間の動物遺存体の分析結果も、千島列島ではカロリー価値の低い鳥への依存が高い。人類の千島列島への移住と資源・土地利用に関わる戦略を踏まえ、更新世後期から近代までを対象に、各時期の集落・居住形態の特徴を明らかにした。今後も新しい環境への人類の進出と適応の過程を考察することで人類の脆弱性や耐性に関する新知見の獲得に資すると考えられる。
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