2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20530062
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
新堂 明子 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00301862)
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Keywords | 純粋経済損失 / 過失不法行為責任 / 不実表示 / 建物の瑕疵 / 製品の欠陥 / 間接被害者 |
Research Abstract |
純粋経済損失が発生する事例につき、A.過失不実表示類型、B.瑕疵建物類型ないし役務不履行類型、C.間接被害者類型を析出し、類型ごとに、過失不法行為責任の成否とその理由を考察した。とくに、瑕疵建物類型では、つぎの知見を獲得できた。 (a)英判例法は、瑕疵修補費用という純粋経済損失につき過失不法行為責任を否定する。理由は以下のとおり。 (1)契約により定められた標準または契約によるリスク・アロケーションを覆さないためである。よって、契約の連鎖を遡り、順に契約責任が追及されるべきである。 (2)原告の請求を許せば、裁判所は訴訟で溢れ、被告は責任に押し潰されるからである。 (3)英法が責任を否定したのは、すでに立法府による制定法が存在し、それにより同様の保護が図られていたからである。他方、日本法が責任を肯定したのは、いまだ立法府による制定法が存在せず、それにより同様の保護が図られていなかったからである。 (b)日本の判例は、危険な瑕疵に限り、瑕疵修補費用という純粋経済損失につき過失不法行為責任を肯定する。理由は以下のとおり。 (4)物理的侵害を予防すべく、その物理的侵害の危険性が存しないことを保護法益と措定したとして最高裁を正当化することができる。 (5)マイホームに欠陥が発覚したときの住宅購入者の精神的落胆や精神的不安はどれほどか。そのような精神的損害を被らないことを保護法益と措定したとして最高裁を正当化することもできる。 (4)(5)の理由は、ある共通の特徴を持つ。すなわち、不法行為法によって保護される利益((4)の場合、周囲の人や物に対して安全であること(危険が存在しないこと)。(5)の場合、住宅の瑕疵による原告の被る精神的損害)と不法行為法によって賠償される損害(純粋経済損失=瑕疵補修費用)の間にギャップがあることである。
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Research Products
(5 results)